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社会福祉士の仕事内容や取り方は?大変さとやりがいを実体験から解説

更新日:2021/10/6

社会福祉士

社会福祉専門職の国家資格である社会福祉士。
ソーシャルワーカー(SW)といわれ、相談援助のスペシャリストとして身体的・精神的・経済的なハンディキャップのある人へ包括的な支援を行います。

福祉的課題が増加する現代においてニーズの高い社会福祉士は、どのように活躍しているのでしょうか?
社会福祉士の仕事内容や資格、やりがいなどについて紹介します。
社会福祉士に関心のある方や資格取得を目指している方はぜひ参考にしてください。

社会福祉士ってどんな資格?

社会福祉士の定義

社会福祉士は、1987年「社会福祉士及び介護福祉士法」制定と同時に誕生し、同法第2条第1項において位置づけられた、社会福祉業務に携わる人の国家資格になります。



社会福祉士の役割

社会福祉士が行う仕事はソーシャルワーク(相談援助)です。
社会的に困っている、支援が必要な人に対して制度の説明や助言、機関への調整を行い、問題解決を図ります。
社会福祉士は、クライエント(相談者)と社会のウェルビーイング(その人にとっての幸せ)を目指すことが役割です。

社会福祉士の資格は、資格を所持していなくてもソーシャルワーカーや相談員として働いていれば行える名称独占の資格です。
しかし専門的な立場で働く方の多くは、社会福祉士を所持しています。
多様な人のウェルビーイングと社会のネットワーク構築のためには、社会福祉士だからこそ行える専門性の高い知識や相談援助のスキルが不可欠です。

社会福祉士の仕事内容

社会福祉士の具体的な業務内容や働き方についてです。


具体的な業務内容

社会福祉士の主な仕事は、クライエントの相談から制度活用の提案や各関係機関との連携、調整を行うことです。
専門的な相談援助技術のスキルによってクライエントが問題や課題に対して前向きになること、そして解決とよりよい状態へ導くためのサポートをします。

相談者の状況や内容は様々ですが、ソーシャルワークの基本は傾聴です。
相手のありのままの気持ちを「受容・共感・傾聴」する姿勢を大切にしながら面接を行います。


様々な働き方と活躍の場


生活相談員

生活相談員として働く社会福祉士は介護施設、特別養護老人ホームや介護療養型医療施設、地域包括支援センター、ケアハウス、児童福祉施設、障害者施設などで活躍します。

例えば介護施設においては、入退去に関する仕事や書類の手続き、入居中の相談援助業務、関連機関との橋渡しが主な業務になります。

また、デイサービス(通所介護事業所)では相談援助業務(利用契約や利用中の相談援助業務、通所介護計画書作成、関係機関との連携)、介護保険請求のほか、介護職と兼務している方も少なくありません。

POINT
介護スタッフへの指導や他職種、他機関と連携し対象者の自立した生活を支援
基本的な介護技術や介護過程の理解も必要



医療ソーシャルワーカー(MSW)

保健医療機関では医療ソーシャルワーカー(MSW:メディカルソーシャルワーカー)として活躍します。
患者や家族のニーズを抽出し、患者か家族の抱える問題(経済的・心理的・社会的問題)解決を目指した援助を行います。
入退院の相談や退院への援助、地域への社会復帰の援助,医師、看護師、リハビリ、ケアワーカーなどと連携し、カンファレンスを開催、入退院における日程や病床の調整が主な仕事です。

POINT
医療ソーシャルワーカーは各医療機関の「医療福祉相談室」「総合相談室」「地域連携室」に所属し、患者や家族を支える



コミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)

地域福祉の推進や体制づくりを行い、地域での福祉ニーズに対応する社会福祉士をコミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)といいます。
社会福祉業議会、社会福祉施設で働き、地域で援助を必要とする人に対して援助を行います。

POINT
地域のネットワーク作りも社会福祉士の大事な仕事



スクール・ソーシャルワーカー(SSW)

生徒を取り巻く環境に働きかけ、学校における子供の問題や家庭環境への問題解決、学習へのサポートを行うスクール・ソーシャルワーカー(SSW)。
教育委員会に配置され、社会福祉士のほか、精神保健福祉士や教員OBなどが、児童相談所や学校と連携し業務を行います。

POINT
子供のQOL(生活の質)の向上と、それを支える学校や地域のより良い環境を目指す
子供への働きかけだけではなく、保護者や教職員等に対する支援・相談・情報提供も行う



その他

社会福祉士は社会福祉協議会、社会福祉事務所、地域包括支援センターなどの行政機関や児童福祉・障害福祉関係施設等でも活躍します。
また、専門学校教員、大学院への進学、福祉機器の開発、教授や助教授、学生への実習指導など職場によってニーズがあり、求められるスキルや知識が異なります。

社会福祉士からのキャリアアップ

ダブルライセンスを取得し活躍

社会福祉士の資格を取得した後、ご自身の職場やキャリアプランに合わせて+αの資格を取れば、さらに視野を広げた業務が行えます。

精神保健福祉士・ケアマネジャー・介護福祉士など福祉系の資格が相性よく、中でも精神保健福祉士は精神障害がある人を対象に支援を行います。
共通科目が免除になるため取得しやすい資格であり、より多様なクライエントの相談を受けることができるでしょう。


成年後見人として支援

成年後見人は、認知症や精神障害、知的障害等により正しい判断が困難な方を対象に、財産上の不利益を被らないよう財産の保護や支援をします。

日本社会福祉会への登録、成年後見人養成研修の受講、権利擁護センター「ぱあとなあ」への登録を行うことで、成年後見活動を行うことができます。


独立型社会福祉士

社会福祉士として社会福祉士事務所を立ち上げ、独立開業も目指すことができます。
日本社会福祉士会の名簿登録と認定社会福祉士の取得、独立型社会福祉士の研修を修了など7つの要件を満たす必要があります。
社会福祉士として成年後見人や教育機関の講師、地域のソーシャルワークなどを手掛けるほか、行政書士とのダブルライセンスで活躍している方もいらっしゃいます。

社会福祉士の画像

社会福祉士のなり方、受験資格取得ルート

社会福祉士の受験資格を取得するためには、12通りのルートがあります。


福祉系大学・短大ルート

・福祉系大学4年(指定科目)
・福祉系短大3年(指定科目)+相談援助実務1年
・福祉系短大2年(指定科目)+相談援助実務2年

短期養成施設等ルート

・福祉系大学4年(基礎科目)+短期養成施設(6カ月以上)
・福祉系短大3年(基礎科目)+相談援助実務1年+短期養成施設等(6カ月以上)
・福祉系短大2年(基礎科目)+相談援助実務2年+短期養成施設等(6カ月以上)
・社会福祉受持養成機関+相談援助実務2年+短期養成施設等(6カ月以上)
・福祉事務所の査察指導員等の実務経験4年+短期養成施設等(6カ月以上)

※実務経験となる職種:児童福祉司、身体障害者福祉司、知的障害者福祉司、査察指導員、老人福祉指導主事

一般養成施設等ルート

・一般大学等4年+一般養成施設等(1年以上)
・一般短大など3年+一般養成施設等(1年以上)
・一般短大等2年+一般養成施設等(1年以上)
・相談援助実務4年+一般養成施設等(1年以上)

※児童分野・高齢者分野・障害者分野・その他によって実務経験の対象が定められている
※実務経験となる職種:高齢者分野では生活相談員や介護支援専門員、指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護を行うオペレーター等



以上12パターンになります。
学歴や相談援助の実務経験がどのくらいあるかによって資格取得までの期間が変わってきます。最短の資格取得のルートは、卒業とともに受験資格を満たしている「福祉系大学4年(指定科目履修)」です。

介護職(社会人)として働きながら一般養成施設等に通い受験資格の取得を目指す方もいらっしゃいます。通信制のスクールでは、仕事と勉強を両立させることも可能です。
いずれにしても「23日間以上かつ180時間以上」の実習が必須となっています。

社会福祉士の試験概要

では、社会福祉士の試験概要についてみていきましょう。

出題基準と合格基準

社会福祉士の試験は19科目から150問、240分【午前の部・午後の部】で実施され、出題形式は五肢択一を基本とする多肢選択形式です。

精神保健福祉士の登録を行なった方(または登録申請中の方)は、受験申込時に必要な書類を提出することで、精神保健福祉士との共通科目が免除されます。

合格基準は、総得点の60%程度(問題の難易度によって補正あり)・18科目群すべてで得点があることです。


社会福祉士国家試験の難易度

社会福祉士国家試験の合格率は26~29%で推移し、福祉系資格の中でも難易度が高い試験です。
受験要件を満たせば年齢に関係なく受験できますが、出題範囲が広く、かつすべての科目で得点を取らなければいけません。
学習範囲が広く得意科目だけで苦手科目をカバーできないことが、合格率が低い背景でしょう。

社会福祉士筆記試験対策のポイント

社会福祉士の試験は科目数が多く範囲が広いことが特徴です。
それぞれの科目での広い知識と深い理解が必要なので、一夜漬けで合格できる試験ではありません。

働きながら養成施設に通って受験する方は勉強時間が不足し、試験当日に合格レベルまで到達できない方も少なくありません。
社会福祉士合格を目指すには300時間~500時間の学習時間が必要とされていますので、ポイントをおさえた効率よい学習が必要です。

社会福祉士の大変さとやりがい

筆者の私が社会福祉士の資格を取得し、実際に仕事をして得た大変さとやりがいをお話します。


大変さ

・仕事の成果が目に見えない
社会福祉士の仕事は、一般企業の仕事のように成果が数字で表せません。
相談援助をしているとき、良い方向へ進んでいるのか?自分の援助は適切なのか?が分からなくなるときがありました。
しかし、クライエントと後日面談したときに笑顔が見られたり、声のトーンが明るくなっていたりすると課題の前進を感じます。
進行度や成果が見えない大変さもありますが、目に見えない積み重ねを評価してもらえたときは喜びを感じる仕事です。

・業務量が多い
仕事に線引きがないため、やろうと思えば無限大に仕事があるのが社会福祉士の仕事。
クライエントの相談内容や都合に合わせると残業することも多く、“この人をサポートしたい”というモチベーションがないと、なかなか続きません。
自分自身でやるべきことの取捨選択、仕事のコントロールをしていく難しい部分があります。


やりがい

・必要なタイミングで最適な援助ができたとき
社会福祉士としてやりがいを感じるときは問題が解決された瞬間です。
相談援助の対象となるのは職場によって様々ですが、私はデイサービスの相談員として働いていましたので主に高齢者とその家族が対象でした。

デイサービスで働いているとき、精神障害を持ちセクハラ行為や暴力行為がある方が利用され、デイサービススタッフだけでなく同グループのヘルパーへの被害が問題となりました。
地域の困難事例として地域ケア会議に社会福祉士として介入し、良い方向へ導くことができたときや、適切な機関との橋渡しを終えたとき、社会福祉士としての醍醐味を感じました。

・自己成長につながる
社会福祉士はクライエントへの対人援助だけでなく、他職種との関わりが多いことが特徴。多職種の方と連携し、共に問題解決へ向かうたびに新しい知識が修得できます。
また、自分の知識やスキルの未熟さを実感するとともに「もっと頑張ろう」と、向上心をもつことができます。
また、相談援助において「何が正解、不正解」といった偏見が通用しないため、視野が広がることも仕事の面白さのひとつです。

筆者が社会福祉士を目指したきっかけ

私が社会福祉士を目指したきっかけをお話します。

私の母は療養型医療施設の看護師で、小さい頃から母の姿を見て育ったので“福祉”“高齢者”が身近な存在でした。
高校性になると母の病院はじめ様々な介護施設でボランティアに参加し、人との関わりが好きで漠然と福祉・介護の道を目指すように。

入所者(患者)は、戦争を経験された年代の方で必死に生きてこられた方が多かったのですが、当時のケアといえば主体性を尊重したケアよりも業務優先のケア。
流れ作業のケアで高齢者や家族の心は置いてきぼり。
「これまで一生懸命生きてきた人の人生の最期がこんなのでいいの?」と疑問をもち、ある時この詩が思い浮かびました。


「ほんとうのことなら多くの言葉はいらない
野の草が風にゆれるように
小さなしぐさにも輝きがある」

これは星野富弘さんの詩画集「四季抄 風の旅」に掲載されている「しおん」という詩で、小さい頃母に教えてもらい大好きだった詩です。

“高齢者”として一律にみるのではなく、個々に輝きがある。 そんな輝きを見つけられる人になりたい!
誰かに寄り添いながらその人の輝きの代弁者となりたい!
そう思い、人生に寄り添える職種として社会福祉士を目指しました。

社会福祉士に向いている人

社会福祉士に向いている人は以下のような人です。

・臨機応変に対応できる人
クライエントがおかれている状況や抱えている問題は多種多様です。
専門的知識やスキル、制度の把握など臨機応変に対応できるよう、引き出しを多く持っている人が向いています。
反対に、決められたことやマニュアル通りの業務しかできない人は向いていません。

・コミュニケーションスキルがある人
相談援助の基本は、受容・共感・傾聴です。
どんなクライエントに対しても、寄り添った対応ができ人やコミュニケーションスキルによって打ち解けやすい環境を作れる人が向いています。

・向上心がある人
人が人をケアすることに変わりはありませんが、制度や知識は日々更新されていきます。
働きながら自己勉強していかなければ、新しい制度や解決策の提案や他職種についていけません。
社会福祉士には貪欲な向上心が求められるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
社会福祉士の仕事内容や資格、やりがいなどについて紹介しました。
筆者の体験談もお伝えしましたが、私が資格取得したのは2005年の第17回社会福祉士国家試験です。当時の試験科目数は13科目 (2008年まで)でしたので、現在資格取得を目指す方はさらに範囲の広い学習をされていることでしょう。

社会福祉士の仕事は、「〇〇すれば解決!」という楽な仕事ではありません。
「止まない雨はない」気持ちで、真摯に相談者に向き合い、誠実に対応することが大切です。
資格取得はゴールではなくスタート地点として、クライエントのウェルビーイングを目指して日々スキルアップしなければいけません。

思うような結果が出ず大変だと感じることもありますが、2度と同じ日がなく毎日に変化があり、やりがいがある仕事です。
社会福祉士に関心をもった方はぜひチャレンジしてみてください。


この記事の著者

吉田あい

大阪府出身 現役のケアマネージャー
専門は「高齢者介護論」「社会福祉援助技術論」
「介護現場におけるリスクマネジメント」

特別養護老人ホームや居宅介護支援事業所などの現場で、
介護職を10年以上経験。介護講師経験3年。
WEBライターとして、
介護・医療・転職・健康などのジャンルで執筆700本以上。

カイゴジョブアカデミーにて、介護の仕事や資格について、
実体験を踏まえたお役立ち情報をお伝えします。

【所持資格】
・介護支援専門員(ケアマネージャー)
・介護福祉士
・社会福祉士
・メンタル心理カウンセラー
など