
介護福祉士の現状
まずは介護福祉士の現状について、さまざまな観点からご紹介します。介護福祉士登録者数
公益財団法人社会福祉振興・試験センターによると、2019年7月時点の介護福祉士の登録者数は約169万人となっています。2017年度の国家試験の受験資格改正によって受験者・合格者数は減りましたが、ここ数年は1年に約6万人が介護福祉士として登録しています。仕事内容
介護の専門職として活躍する介護福祉士ですが、実際にどのような仕事内容になっているのでしょうか?具体的な仕事内容をご紹介します。 介護福祉士は、介護施設・介護事業所において介護業務全般を担います。食事、移動、排泄、衣類の着脱、入浴などの日常生活の支援を行い、その他にも、利用者・家族への介護に関する助言や他の介護職への教育等にも携わります。給与
それでは介護福祉士の平均給与はどのくらいなのでしょうか? 厚生労働省の「平成30年度介護従事者処遇状況等調査」によれば、無資格の介護職の平均給与は月額約26万円、一方、介護福祉士の平均給与は月額約31万円となっています。介護施設・介護事業所の種別や法人によって給与に違いはありますが、介護福祉士の資格を取得することで給与に大きな差が出ていることがわかります。
介護職の人材不足
現在、介護職の有効求人倍率は3.5倍以上であり、深刻な人材不足となっています。有効求人倍率とは「有効求職者数に対する有効求人数の比率」を表し、1倍以上になると求人数が求職者数を上回っていることを意味します。未経験や無資格の方も介護職として採用されていますが、その中でも介護福祉士は、高い知識と技術を持つ有資格者として求人の数も多く、好待遇で採用される傾向にあります。介護福祉士はなぜ人手不足なのか
なぜ介護職は不足しているのでしょうか?その原因について説明します。日本の高齢化
介護職が不足している原因のひとつは、「高齢化」です。日本は、2007年に人口の65歳以上が21%を超える「超高齢社会」に突入し、介護サービスの需要が増加していますが、増加する需要に対する介護職の採用が追い付かず、人材不足となっています。2025年には人口の30%、2060年には40%が高齢者になると言われており、今まで以上に深刻な介護職不足が予想されています。介護職に対するイメージ
介護には「きつい」」「汚い」「危険」「給料が安い」などのネガティブなイメージがあり、人材の確保、定着が難しいようです。 具体的には、体力的に負担が多い、腰痛などになることがある、長時間労働がある、変則的なシフト勤務、入浴介助や排泄介助、ノロウィルスやインフルエンザなどの集団感染、精神的な負担、給与が安い、仕事内容に見合わない給与などが挙げられます。 すべてが実際の職場で当てはまることではありませんが、これらのことが理由で離職した方、イメージを持っているので就職をためらっている方が多いようです。介護福祉士の不足に対する対策
それでは介護福祉士の不足にどのような対策が行われているのでしょうか?介護職に対するイメージの改善
マイナスイメージが多い介護職のイメージを払拭するために、厚生労働省と文部科学省は連携し、中学・高校の学生を対象とした介護体験を実施しています。たとえば鳥取県では、介護施設での高齢者の話し相手やレクリエーションを通して、介護職の魅力を体感できる「介護職体験」を行っています。また高知県では、イメージアップに向けた介護番組を放送し、介護現場の様子などを紹介し、介護職への興味・関心を高める取り組みを行っています。このように、介護体験の実施やメディアの活用により、介護のイメージを刷新することで、介護現場における人材不足の長期的解決を目指しています。介護職員の離職防止・定着率向上
新しい人材の確保も重要ですが、介護職員の待遇改善による離職防止も重要な取り組みです。介護ロボットの導入
介護現場では、介護ロボットの導入が進められています。入浴・移動介助による身体的負担の軽減、センサーなどを利用した夜勤職員の業務負担の軽減などに効果があるとして、補助金が設けられ、介護ロボットが導入されています。書類のペーパーレス化
介護現場では、利用者の介護記録など毎日たくさんの書類を作成しなくてはいけません。これらのペーパーレス化を図り、事務業務を効率化することで介護に充てる時間の確保し。残業時間を減らす取り組みが進められています。事業内保育所の整備
職場に保育所を整備することで、小さな子供がいる介護職が安心して就業できる環境の構築が図られています。また、これによって出産・育児による離職を防ぐことにつながっています。介護福祉士の特定処遇改善加算
2019年10月からの消費税増税に伴い、特定処遇改善加算が導入されます。これまでも実施されてきた介護職に対しての処遇改善に加え、経験・技能のある介護福祉士に対して、更なる処遇改善を目的として、介護福祉士が将来を見据えて働くことができる環境を整備しています。補助金や助成金による支援
介護福祉士を目指す方を支援する制度として、実務経験ルートから受験資格として必要になる「実務者研修」の受講を支援する制度があります。ハローワークの「専門実践教育訓練給付金」、社会福祉協議会の「介護福祉士実務者研修受講貸付金制度」など、受講料の負担を軽減して、資格取得を目指すことができます。介護福祉士の今後の展望
「介護職は将来性が不安」という声がよく聞かれます。しかし、今後の高齢者の増加や、介護職員の人材不足を考慮すると、介護福祉士が活躍する就業先はますます増えていくでしょう。また、国を挙げて介護職の処遇改善に取り組んでいますので、介護福祉士の待遇はこれからも上がっていくと予測されます。介護福祉士を取得するには
介護福祉士の資格を取得するためには、介護福祉士国家試験に合格する必要があります。国家試験は受験資格を満たし、毎年1月末に行われる筆記試験に臨みます。 介護福祉士の受験資格には「実務経験ルート」「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」「経済連携協定(EPA)ルート」の4つのルートがありますので、それぞれを簡単に説明します。- 実務経験ルート 実務経験を3年以上(従事期間1095日以上かつ従事日数540日以上)に加え、実務者研修を修了することで受験資格が得られるルートです。実務者研修は約6ヵ月間、介護福祉士に必要な知識・技術を学習します。
- 養成施設ルート 専門学校、短期大学、大学などの養成施設を卒業することで受験資格を満たすルートです。
- 福祉系高校ルート 福祉系高校を卒業することで受験資格を満たすルートです。
- 経済連携協定(EPA)ルート 経済連携協定(EPA)で来日し、実務経験を積むことで受験資格を満たすルートです。