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介護職で高齢者へ虐待となった事例とは?

更新日:2022/1/21

高齢者虐待の問題

ニュースやメディアでたびたび話題になる高齢者虐待問題。
現代社会の大きな問題となり、家族からの虐待だけでなく介護施設や介護事業所で働く介護職による虐待も報告されています。
介護職として働いている方も、もしかしたら気づかないうちに虐待と受け取られてしまう行動を取ってしまっているかもしれません。

今回は、増加する高齢者虐待問題について虐待の種類や原因、虐待が起こる要因についてご紹介します。
介護職で高齢者へ虐待となる事例もあわせてお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

虐待の種類

“虐待”と聞くと、身体的な害を及ぼす暴力というイメージが強いですが、身体に関わるものだけが虐待ではありません。

厚生労働省は虐待を以下5つの種類に区分しています。

身体的虐待

高齢者に対して暴力的行為や、やむを得ない場合以外の身体拘束、行動や言動の制限、強制的行為を身体的虐待といいます。


【介護施設での虐待事例】

・殴る、蹴る、叩く、つねるなどの暴力行為
・外部との接触を遮断
・ベッドや車いすへの縛り付け
・薬の過剰服用
・言葉による適切でない身体拘束・抑制
・排泄の失敗をした高齢者に対して、お尻を叩く
なども身体的虐待にあたります。

介護放棄(ネグレクト)

意図的かどうかを問わず、日常生活で必要な介護や生活の世話を放棄、放任し、生活環境や身体・精神的状態を悪化させていることです。


【介護施設での虐待事例】

・入浴や整容などを行わず、異臭や皮膚を不衛生なまま放置している
・水分や食事を十分に与えず、脱水や栄養失調の状態
・汚物を室内に放置したまま劣悪な環境で生活させる
・ナースコールの放置や届かない場所に設置する
・必要な介護、医療サービスを理由なく制限するなど

心理的虐待

高齢者に対して暴言・威圧・侮辱・脅迫・無視、拒絶的な対応、その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うことを心理的虐待といいます。


【介護施設での虐待事例】

・怒鳴る、悪口を言うなどの暴言、威圧的な態度、言葉の暴力
・誹謗中傷
・無視、嫌がらせ
・侮辱的に子供のように扱う
・排泄の失敗などを失笑するなど

性的虐待

高齢者にわいせつな行為をすること、高齢者にわいせつな行為や性行為の強要や性的暴力、性的羞恥心を喚起する行為の強要、性的嫌がらせなどが性的虐待です。


【介護施設での虐待事例】

・キス、性器への接触、セックスの強要
・排泄介助、入浴介助時の卑猥な言動
・排泄の失敗に対して懲罰的に下半身を裸にして放置する

経済的虐待

養護者又は高齢者の親族が本人の同意がなく、財産を不当に処分すること、その他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。


【介護施設での虐待事例】

・日常生活に必要な金銭を渡さない/使わせない
・お小遣いとして預かっている金銭の着服
・本人の自宅や持ち物等を家族が無断で売却する
・年金や預貯金を本人の意思・利益に反して使用する
などがあります。

このように身体に関わる行為だけを虐待と呼ぶのではなく、精神的なダメージを与え尊厳を傷つける行為すべてを虐待としています。

介護現場に潜む虐待「スピーチロック」

介護現場で当たり前のように使用している言葉にも身体的・精神的な抑制が潜んでいます。
それは「スピーチロック」で、言葉の拘束ともいわれています。

「ちょっと待って」「だめでしょ」と、言葉によって身体的・精神的な行動を抑制することです。
スピーチロックは一般的な声かけとの明確な差がなく分かりにくいですが、多くの介護施設や介護事業所では、高齢者虐待とともに研修を行い問題意識が高まっています。

例えば、「トイレに行きたい」「部屋に戻りたい」といわれたとき。
忙しい介護現場では「ちょっと待って」ということも多いかと思いますが、この声かけはスピーチロックのひとつ。
命令によって高齢者の行動を制限していることになります。

介護現場の状況によってすぐに対応できない場合もあります。
その場合は「~していただけますか」と、高齢者に判断をしてもらうような優しい口調や具体的な内容を伝えるようにしましょう。

増加する高齢者虐待

超高齢社会の日本では、高齢になっても自分らしく豊かに過ごしたいという想いに寄り添った取り組みが推進されています。
しかし、家庭だけでなく高齢者の命を守るべき場所である介護施設でも、虐待が行われているという事実があります。
令和元年の厚生労働省の報告によると、養介護施設従事者等による虐待判断件数は644件報告されています。
平成30年度の621件から23件(3.7%)も増加しています。

介護施設や居宅サービス事業所での高齢者虐待は、介護職が虐待をするはずがないという思い込みや、閉鎖された空間のため外部から気づきにくい特徴があります。
そのため、介護職による高齢者虐待の事実が発見されたときには手遅れになっているケースも少なくありません。

虐待の事実が認められた介護施設

介護施設や居宅サービス事業所における高齢者虐待事例は、令和元年度で、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)が 190 件(29.5%)で最も多い件数。
次いで有料老人ホームが 178 件(27.6%)、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)が 95件(14.8%)、介護老人保健施設が 72 件(11.2%)であったと報告されました。

虐待の内容

養介護施設従事者等による高齢者虐待では、令和元年度の被虐待高齢者 1,060 人のうち以下の種別の虐待が認められました。
身体的虐待: 637 人(60.1%)
心理的虐待:309 人(29.2%)
介護等放棄:212 人(20.0%)
また、養介護施設従事者等による虐待における死亡事例は 4 件だったと報告されています。

なぜ介護施設で高齢者虐待が起こるのか?

高齢者の生活と命を守るべき存在である介護職。
多くの介護職員は「誰かの役に立ちたい」「よりよい生活をサポートしたい」と熱意をもって業務にあたっています。
しかし虐待をする介護職員がいるのも事実。

厚生労働省の令和元年度の調べでは、介護施設で虐待が起こる理由を以下のように報告されています。

「教育・知識・介護技術等に関する問題」が 366 件(56.8%)
「職員のストレスや感情コントロールの問題」が 170 件(26.4%)
「虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等」が 132 件(20.5%)
「人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ」が 81 件(12.6%)

では、“なぜ虐待が起こるのか”高齢者虐待の要因について考えてみましょう。

人手不足

虐待件数が多い特別養護老人ホームには、介護度の高い高齢者や認知症高齢者が多く生活しています。
介護の手がかかりますし介護職員の身体的・精神的な負担も大きいです。
介護現場はいつも人手不足で介護職一人にかかる業務負担も重くのしかかり、職場環境は悪化。
イライラや疲労をため込んでしまい、そのストレスのはけ口として立場の弱い高齢者に虐待をしてしまうということでしょう。

介護職の知識や技術不足

人手不足による劣悪な職場環境だけでなく、介護職自身の知識や理解のなさも虐待を引き起こす原因となります。
未経験・無資格からでも働ける介護職は、接遇や細かい業務内容について十分な知識がないまま介護現場に直面する方もいます。
例えば、麻痺のある方の介助や認知症高齢者の接し方などです。
知識や技術がないままケアに入り、うまく対応できないことでストレスが蓄積され虐待してしまうケースがあります。

被虐高齢者の状況

介護施設で起こる高齢者虐待には様々な要因がありますが、被虐者の心身の状況も虐待に大きな関連があります。

厚生労働省の令和元年度の被虐待高齢者の状況では以下のように報告されています。
要介護度3 以上の者が 803 人(75.8%)
被虐待高齢者の認知症日常生活自立度Ⅱ以上の者が804 人(75.8%)
要介護認定者のうち障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)A以上の者が 610 人(57.5%)


・認知症日常生活自立度Ⅱとは?

「日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多尐見られても、誰かが注意していれば自立できる」


・障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)Aとは?

屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない。
介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する。
外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている。

つまり、多くが認知症の症状がみられ、介助が必要な高齢者ということになります。


職場環境の人員不足によってサポート体制が十分でないこと、被虐高齢者の言動による介護職への介護負担が大きいことが虐待を招く要因のひとつと考えられるでしょう。

実際にあった虐待事例

では、筆者が実際に遭遇した虐待事例を2つ紹介します。

寝たきりの高齢女性に対する性的虐待

被虐者は、寝たきりの高齢女性で軽度の認知症。
男性介護職員が排泄介助時に性的嫌がらせや性器への接触などのわいせつ行為を行った。
本人から家族への相談があり、家族が介護施設へ訴え発覚。

夜間時の身体的虐待

被虐者は介助により歩行できる女性高齢者で、夜勤者による虐待。
夜間帯、トイレに行きたいと職員を呼ぶと「またか」との暴言、足を叩くなどの行為。
ベッドに戻る際は、押し倒すように乱暴に寝かせた。
翌日、早出の出勤者に対して夜間時のできごとを相談し発覚。

いずれも被虐者が問題を訴えることができたため、初期の段階で迅速に対応でき退職処分となりました。
しかし、誰にも相談できないケースでは問題が明るみになることなく虐待が繰り返され、より酷い状況に陥っていたのでしょう。

介護施設での高齢者虐待の取り組み

これらの虐待事例から「職員のモラルの問題」「うちには関係ない」と思っている方は少なくないでしょう。
しかし、明るみになる高齢者虐待は氷山の一角であり身近な問題であると認識しなければいけません。

介護施設では、高齢者虐待の防止に対して以下のような取り組みを行っています。


・職員のストレス軽減
・職場環境の改善
・虐待防止に関する研修や指導
・高齢者権利擁護や人権に関する研修
・高齢者虐待防止マニュアル

筆者の働いていた介護施設では、高齢者体験をする研修がありました。
1日利用者になり、ベッドや車いすでの生活を行うというものです。

自分で自由に行動できない状況で「ちょっと待って」という行動を制限する声かけやナースコールを離れた場所に設置し、押せない状況というのは辛いものでした。

また、移譲や移動時には介助者の動作や声かけなしの介助は乱暴に感じます。
より相手のことを考えた介助、「自分は大切にされる存在」だと感じられる対応が必要だと、改めて感じさせる研修のひとつでした。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
高齢者虐待の種類や原因、介護職で高齢者へ虐待となる事例などを紹介しました。

もし相手が自分の赤ちゃんや子供だったらこんなことするでしょうか?
怪我をしないように傷つけないように、丁寧に抱っこしてあやしますよね。

虐待は、介護が必要な方に対して尊厳の意識や介助の知識と技術が不足していることから、ストレスのはけ口化となるのです。
高齢者虐待は、高齢者の意欲や自立心を低下させ尊厳を傷つける行為です。

介護施設や介護事業所では、介護の実態を把握し防止策や対策を図ること、そして高齢者虐待防止法の周知徹底が重要です。

また、介護職員の虐待に関する知識やプロの介護者としての意識を高める教育を行う必要があるでしょう。
無資格・未経験から介護職にはなれますが、適切な介助を行うには基礎的な知識や技術の習得が大切です。


介護職を目指している方は、まず介護職員初任者研修の受講を検討されてみてください。
ぜひ研修によって正しい介助技術と、高齢者の尊厳を守る介護の在り方について知識を深めましょう。

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この記事の著者

吉田あい


大阪府出身 現役のケアマネージャー
専門は「高齢者介護論」「社会福祉援助技術論」
「介護現場におけるリスクマネジメント」

特別養護老人ホームや居宅介護支援事業所などの現場で、
介護職を10年以上経験。介護講師経験3年。
WEBライターとして、
介護・医療・転職・健康などのジャンルで執筆700本以上。

カイゴジョブアカデミーにて、介護の仕事や資格について、
実体験を踏まえたお役立ち情報をお伝えします。

【所持資格】
・介護支援専門員(ケアマネージャー)
・介護福祉士
・社会福祉士
・メンタル心理カウンセラー
など