人を支え、支えられるのが介護職。自衛隊とコンビニ店長代理を経験し、50代で未知の世界に飛び込んだ女性の決意
初任者研修から踏み出した一歩
「みんなの介護転職ストーリー」、今回の主役は伊藤京子さんです。海上自衛隊や大学職員、コンビニ店員と幅広く仕事を経験してきた伊藤さんは、仕事を通して学生さんの相談に乗ったり、認知症を患っている高齢者の方の対応をしたりと何かと機転を利かせ、プラスアルファの仕事ぶりで評価されてきました。そして50代の今、一念発起して介護業界に転職。なぜ介護職にチャレンジしたのか、転職のいきさつを伺いました。
2024年7月~8月 介護職員初任者研修(短期コース)/名古屋校
2024年7月 介護老人保健施設に転職
大学職員として学んだカウンセリング
藤井:伊藤さんはこれまでどんなお仕事をされてきたのですか?

藤井:大学職員にはいろいろな業務があると思いますが、どのような業務をされていたのですか?
伊藤さん: 学生寮の職員として、入寮している学生さんの生活支援全般をサポートしていました。学部と学生との連携をとったり寮生を指導することが主な仕事でしたが、学生さんの実家から届いた荷物を預かったり、学生さんが体調を崩したら通院に付き添ったりもしました。
藤井:学生さんのケアといった役目が多かったようですね。
伊藤さん: そうですね。デスクワークよりも学生さん相手の業務が多かったです。学生さんの悩みを聞いたり相談に乗ったりすることもあったので、在職中に産業カウンセラーや教育カウンセラーなどの資格も取りました。あの時の経験は介護の仕事にも役立っていると思います。
藤井:大学職員でカウンセラーの資格を取る人は多いんですか?
伊藤さん: 多かったです。心身の不調を訴える大学生が少なくなかったのと、時代的にメンタルヘルスの重要性が認知されてきた頃だったので、カウンセラーの資格を取ったり、カウンセリングの知識を身につけたりする人がたくさんいました。
コンビニ店員と介護職の共通点
藤井:その後ご結婚されて、コンビニ店員として仕事を始められたのですね。
伊藤さん: はい。結婚して子どもを出産してから、扶養内で日勤帯だけのシフトにするなど配慮してもらったこともあり、12年と長く働かせてもらいました。
藤井:長く勤められたとなると、リーダーなどもご経験されたのですか?
伊藤さん: はい、経験しました。新しく入ったアルバイトの方に業務マニュアルを元に指導することから始まって、設備の管理や商品の発注も任せてもらいましたし、最終的には店長代理までさせていただきました。

藤井:コンビニの仕事が順調なのに、介護職にシフトしようと思ったのは、何か理由があったのですか?
伊藤さん: 当時高校生だった息子が県主催の介護職員初任者研修を受けたのですが、いつも楽しそうに参加していたんですよね。その姿を見て「へえ介護か。面白そうだな」と思ったのがきっかけです。
藤井:コンビニ業務と介護職というと全く違う業務のようにも思えますが、共通点もあるのでしょうか?
伊藤さん: たくさんあると思います。コンビニの利用者は若者が多いように感じるかもしれませんが、実は高齢者も多いんです。ひとり暮らしの高齢者の方などが買い物ついでにおしゃべりに来る感じですね。毎日来る方の姿がしばらく見えなかったり、ひとり暮らしの高齢者の方に認知症の症状のようなものが見えたら地域包括支援センターに一報入れるとかしていました。おせっかいかなと思いつつも、お客様のお役に立つことを意識していました。
藤井:伊藤さんはずっと人の役に立ちたい、という思いが強い方なのですね。
伊藤さん: 意識的にやっていたわけではなく、ただ困っている人をサポートしたいという思いからでした。でも今思えば介護的な視点で関わっていたのかもしれません。もともと人付き合いが得意で世話焼きな性格なんです。誰かが困っていたら自然と気づいちゃうというか、ついサポートしちゃうというか。
藤井:素晴らしいことですね。なるべくして介護職になられたのかもしれませんね。
伊藤さん: それもあるかもしれませんが、それだけが転職の理由ではないんです。プライベートなことですが、当時夫との離婚を考えていたところだったので、一人になっても生計を立てられるよう正社員として働きたいと思っていました。それが転職の後押しになったとも言えます。転職して、心機一転したいという思いもあったと思います。
藤井:そうだったのですね。介護の仕事をしようと考えたとき、どんなイメージがありましたか?
伊藤さん: すごく大変そうだと思いました。コンビニに介護職の方も買い物に来られていたのですが、いつも疲れている印象があったんです。でも他愛のないおしゃべりの中で、やりがいのある仕事なんだということは伝わってきました。大変だけど、世の中に貢献されていて素晴らしい仕事だなと。実は「一緒に仕事しませんか?」などと誘われることもあって、私の年齢でもいけるのかなあと思ったこともありました。
「働きながら学ぶ」サイクルで、理解度もアップ
藤井:介護職への転職を考えてから、どのような行動に移されましたか?
伊藤さん: 県内の福祉団体に連絡して、転職したいことを伝えました。一度面談をして連絡待ちをしていたんですが、2か月半待っても返事がなくて。あまりに待たされるのでしびれを切らし、自分で介護系の転職サイトを探したところ、カイゴジョブアカデミーがヒットしたのですぐに登録しました。
藤井:意欲的に行動されたのですね。
伊藤さん: カイゴジョブアカデミーに登録した後は、キャリアパートナーさんから連絡をいただいて、とんとん拍子に話が進みました。私の場合できるだけ早く転職して生計を立てたかったので、スピーディーに対応してくれたのは有難かったです。キャリアパートナーさんと相談して、転職活動と初任者研修の受講を同時に進めることになりました。

藤井:初任者研修の受講はいかがでしたか?
伊藤さん: 「すごく楽しかった!」の一言です。私は学ぶのが好きな性分なので、勉強が苦にならないんですよね。転職もして介護職として働きながら受講したので、現場でわからないことは次の授業ですぐ質問できて、理解が深まって本当に有意義な学びでした。
藤井:働きながら学んだことが良かったのですね。
伊藤さん: 仕事と並行して学ぶことで、先生の言っていることがとても良く理解できました。教科書で学ぶことも、介護現場の状況や利用者さんによって柔軟に変える必要があることも実感しました。
藤井:転職先を探すにあたり、勤務先への希望はありましたか?
伊藤さん: 自宅から近いことと、正社員として雇用してもらうことでした。キャリアパートナーさんには2つほど紹介していただきました。転職を決めた介護老人保健施設と、障がい者施設です。
藤井:老健に決めた理由はなんでしょうか?
伊藤さん: 自宅から10分と近いこと、正社員として採用していただけることと、年収も申し分なかったからです。キャリアパートナーさんから、ここに転職した方々が長く勤め続けていると聞いたことも決め手になりました。プロのエージェントを通さなかったらこんなに好待遇の職場は見つからなかったと思います。
藤井:転職されて、お仕事はいかがですか?
伊藤さん:
初めは戸惑うこともたくさんありました。出勤初日の出来事ですが、食事介助をしたときに教えていただいた介助方法に納得がいかなかったんです。私自身、食事はゆっくりと味わって食べるのが当たり前だと思っていたので、流れ作業的な介助の仕方にモヤモヤしてしまって。その時はカイゴジョブアカデミーの専任サポーター(※)にLINEで相談しました。
※入社日から30日間、仕事に関する悩みや不安、職場での疑問や困った事などを、介護経験が豊富なサポーターに無料でLINEにて相談することができるサービス。
藤井:一人で抱え込まずに、専任サポーターに相談したんですね。
伊藤さん: はい。すぐに相談できる環境があったのはすごく有難かったです。業務上の疑問や不安も第三者に吐き出すと精神的にスッキリしますし、自分が何に対して引っかかりを感じたのか客観視できますからね。サポート期間は1カ月だったんですが、もっと長いと良いのになと思いました。

介護とは、支え、支えられる家族みたいな関係
藤井:さまざまな人生経験をして介護職に就かれたわけですが、介護についてどんなふうに感じていますか?
伊藤さん: いろいろな経験をして年齢を重ねた今、人は誰でも老いて誰かの手を借りることになり、そして最期を迎えるということを感じています。若い頃には「老い」や「死」はすごく遠いところにあるものと思っていましたが、今は「誰にとっても身近なこと」と感じています。
藤井:誰しも人生の最期に必要になるのは介護なのかもしれません。
伊藤さん: そう思います。このことは初任者研修を受けた仲間とも話していました。「自分もいつかは介護でお世話になるんだから、その前に介護させてもらう側になるのも良いよね」と。利用者さんと介護職って「介護する側」「される側」として上下関係が生まれやすいと聞きますが、「いつか自分も介護される側になる」という思いがあれば自分の心も穏やかになるし、真摯に取り組めると思っています。
藤井:ぜひ、そういった思いを大切にしていってほしいです。
伊藤さん: そう思うと介護職って、利用者さんと「支え、支えられる家族みたいな関係」を築いていけるんですよね。私自身、離婚という人生の転機を迎え第二の人生を踏み出したわけなんですが、介護という世界で少しだけ皆様の役に立つ。そんな日々を楽しんでいこうと思っています。
藤井:最後に、これから挑戦したいことや目標を教えてください。
伊藤さん: まずは実務者研修を受講し、介護福祉士に挑戦します。その後、社会福祉士の取得を目指し、生活相談員になるのが目標です。
インタビューを終えて
前職で人のサポートが得意だと感じてきた伊藤さん。現在はその能力を介護の現場でも発揮して、イキイキと働いているのが印象的でした。「気が利くね」「周りがよく見えているね」などと友達や同僚から言われたことのある人は、介護職に向いているかもしれません。あなたが無意識に発揮している強みを介護職として社会のために活かしてみませんか?
構成、執筆:秦佐起代
記事の監修者:藤井寿和(介護福祉士)
「みんなの介護転職ストーリー」でご紹介している方々は、無資格・未経験から介護業界に挑戦したカイゴジョブアカデミーの卒業生です。皆さんが活用された「特待生キャンペーン」なら、自己負担なしで「介護職員初任者研修」の資格を取得でき、さらに介護職専門のキャリアアドバイザーによる就職先の紹介も受けられます。資格が1つあるだけで、給与や待遇がアップし、就職・転職時にも大変有利です。下記リンクからそれぞれ詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
伊藤さん: 大学卒業後、就職先の第一志望は母校の大学職員だったんですが、私が卒業した当時はちょうど就職氷河期で、自分の出身校といっても簡単に就職することができませんでした。それで一度、海上自衛隊に勤め、任期を終えた頃にちょうど母校の職員に空きが出たので、晴れて大学職員になれました。