認知症介護基礎研修が義務化!介護職員初任者研修とどちらがおすすめ?
2021年4月から介護報酬改定に伴い、無資格の介護職に「認知症介護基礎研修」の受講が義務化されました。
この記事では、「認知症介護基礎研修」の概要や、同じく認知症ケアについて学ぶ「介護職員初任者研修(以下、初任者研修)」との違いにふれながら、認知症介護基礎研修を受講するメリットやデメリット、さらには取得方法などについて解説します。
これから介護職を目指す方や、認知症介護基礎研修と初任者研修のどちらを受講すべきかお悩みの方はぜひ参考にしてください。
※都道府県によって価格が異なります
- 約1 ~ 4ヵ月
- 通信 + 通学
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目次
認知症介護基礎研修とは?
認知症介護基礎研修とは、認知症の人への介護を行う介護従事者が、認知症への理解を深め、ケアに必要な基礎的な知識や技術を習得するための研修です。チームケアを実践する上で、基本的な認知症ケアの提供ができることを目指しています。以下に認知症介護基礎研修の概要についてまとめました。それぞれの項目についての詳細は後述します。
対象者 | 無資格の介護職員 |
---|---|
内容 | 講義:認知症の理解と対応の基本 演習:認知症ケアの現場での留意点 |
受講時間 | 6時間(1日で修了) |
受講費用 | 無料~5,000円程度※自治体によって異なる |
難易度 | 低い |
修了試験 | なし |
義務化の時期 | 2021年4月から(経過措置は2023年まで) |
認知症介護基礎研修の本格的な義務化は2024年4月から
認知症介護基礎研修は2021年4月から開始されましたが、2021年~2023年の3年間は経過措置期間です。完全に義務化されるのは、2024年4月からです。
認知症介護基礎研修を義務化する背景
令和5年7月に公表された厚生労働省の簡易生命表によると、日本人の平均寿命は女性87.09歳、男性81.05歳です。認知症は85歳以上の4人に1人に現れると言われておりされ、長寿の日本人にとって身近なものです。認知症になっても自分らしく安心・安全に生活していくためには、家族含め近くで支える介護従事者の質の高い認知症ケアが欠かせません。しかしながら教育・知識・介護技術等に関する問題に起因する高齢者虐待が社会問題となっており、介護従事者に対する知識や技術の教育の必要性が重視されています。
このような背景から介護職員の認知症ケアに関する専門的な知識とスキルの取得を目指して、2021年4月に認知症介護基礎研修が義務化されました。以下は認知症介護基礎研修が義務化されるまでの経緯をまとめました。
2001年 | 認知症介護実践者研修、実践リーダー研修、指導者養成研修がスタート |
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2006年 2014年 |
見直しを経て、認知症介護指導者養成研修のカリキュラム改訂、認知症介護基礎研修のプログラム作成実施 |
2021年 | 介護報酬改定、認知症介護基礎研修の義務化 |
参照元 厚生労働省:令和4年簡易生命表の概況
参照元 厚生労働省:認知症介護基礎研修、実践研修等のあり方およびその育成に関する調査研究事業報告書
認知症介護基礎研修は就職後1年以内に受けよう
新規採用・中途採用を問わず、入職後1年間は受講猶予期間があります。入職後は、1年以内に認知症介護基礎研修の受講を目指しましょう。
認知症介護基礎研修の対象者は?
受講の対象となるのは、「無資格の介護従事者」です。(医療・福祉関連の資格を取得していない方)また、居宅介護・施設介護等、働いている施設の要件は問いません。
以下の有資格者や認知症ケアに関する基礎的な知識・技術を既に習得している職員(認知症介護実践者研修や認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者研修等の修了者)は、義務化の対象外です。
認知症介護基礎研修が免除される資格
看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、実務者研修、介護職員初任者研修、生活援助従事者研修、介護職員基礎研修、訪問介護員養成研修1級課程・2級課程、社会福祉士、医師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師
参照元 認知症介護情報ネットワーク(認知症介護研修に関する資料)
注意!このような人は免除されません
認知症ケアの民間資格である認知症サポーター養成講座や、認知症ケア指導管理士といった資格は持っていても免除対象とはなりません。
このような方はある程度、認知症の知識があり内容が重複することもあるため、認知症介護基礎研修よりも初任者研修を受講する方がよいかもしれません。
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介護職員初任者研修と認知症介護基礎研修の違いは?
初任者研修と認知症介護基礎研修の違いは、学習範囲と受講料、受講期間の3点が大きく異なります。
初任者研修 | 認知症介護基礎研修 | |
---|---|---|
学習範囲 | 介護全般 | 認知症ケアに特化 |
受講料 | 5万円~10万円 | 無料~5,000円程度※自治体による |
受講期間 | 最短1ヵ月~ | 1日 |
初任者研修とは?
初任者研修とは、介護職として働く上で必要になる基礎的な知識と技術の習得を目指す介護の入門資格です。また、初任者研修を取得することで訪問介護事業所で働くことができるようになります。
初任者研修のカリキュラムには、認知症介護基礎研修の内容が含まれているため、初任者研修を修了することで、認知症介護基礎研修が免除されます。
初任者研修の受講費用の相場は5万円~10万円で、最短1ヵ月で取得を目指せる公的資格です。
初任者研修のカリキュラムや授業内容、受講料、受講期間については以下の関連記事をぜひ参考になさってください。
認知症ケアを学ぶ初任者研修と認知症介護基礎研修、どちらがおすすめ?
認知症介基礎研修と初任者研修のどちらを受講するか決めかねている場合は初任者研修をおすすめします。費用と期間はかかりますが、活躍の場が増え、資格手当などが付くためお給料アップに直結し、キャリアアップもスムーズに進みますので取ってよかったと実感しやすい資格だからです。
カイゴジョブアカデミーでは、初任者研修の費用も相場より安く設定しているため受講しやすいのが特長です。
エリア | カイゴジョブアカデミーの受講料 | 相場 |
---|---|---|
東京・神奈川・千葉・最短・愛知 | 42,900円税込 | 50,000~100,000円 |
大阪・兵庫・広島・福岡 | 31,900円税込 |
さらに、資格取得と就業サポートがセットになった就業支援制度「介護職デビューキャンペーン」を実施しています。介護職デビューキャンペーンを利用すれば、自己負担なしで資格取得と就職サポートを受けることができます。ご興味のある方はお気軽にお問合せください。
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受講費用*&
テキスト代 -
振替受講や
再試験代 -
就業
サポート
*初任者研修 または 実務者研修
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認知症介護基礎研修を受講するメリットって?
認知症介護基礎研修を受講することで、認知症ケアをする側とされる側の不安やストレスを軽減しやすくなります。介護職は無資格・未経験からはじめることができる仕事です。全くの無資格・未経験の状態ですと認知症の利用者に対してどう接して良いか分からず、戸惑うことが多くありますので、認知症について正しく理解することはとても重要です。
また、初任者研修と比べると1日完結で受講料もお手頃ですので、最初の一歩としては非常に取り組みやすい研修でしょう。
認知症介護基礎研修を受講するデメリットって?
先述した通り、初任者研修は認知症介護基礎研修の内容が含まれているため、仮に初任者研修を受けることになると認知症介護基礎研修に費やした時間と費用が無駄になってしまう可能性があります。
また、認知症基礎研修を受講しても訪問介護事業所で働くことはできません。
一方、初任者研修は、訪問介護事業所で働けるようになるだけなく、就職・転職に役立ち、キャリアアップやお給料アップに反映されるなどのメリットが多い研修です。
実際、多くの介護職員がキャリアアップやお給料アップを目指して初任者研修を受けますので、はじめから初任者研修を受講する方が二度手間を防ぐことができるかもしれません。
カイゴジョブアカデミーでは、介護職として就職・転職をご検討中の方を対象に初任者研修の受講料を当校が実費負担する介護職デビューキャンペーンを実施しています。初任者研修の取得と就業サポートを自己負担なしで受けることができます。初任者研修の受講と併せて就職・転職をご検討中の方はぜひお気軽にお問合せください。
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認知症介護基礎研修の取り方は?
認知症介護基礎研修の受講方法はお住まいの都道府県によって異なり、以下のようなパターンがあります。
【受講パターン】
- eラーニング(講義)
- eラーニング半日+集合型半日
- 全eラーニング
- 集合型研修 など
認知症介護基礎研修の研修費用は?
研修費用についても同様に各都道府県によって異なり、自治体が主催しているケース・民間等の団体に委託しているケースによっても研修費用は異なります。テキスト代や受講費を含めて無料~5,000円程度のケースが多いです。
認知症介護基礎研修の研修時間は?
eラーニングの場合、動画の視聴時間は約150分です。これに確認テストの解答時間がプラスされます。集合型研修の場合、講義3時間+演習3時間の6時間程度です。一日で修了します。
認知症介護基礎研修の研修内容は?
認知症介護基礎研修の標準のカリキュラムは『認知症の人の理解と対応の基本』です。
認知症の人を取り巻く現状、病状に関する基礎的な知識を学び、認知症ケアの基礎的な技術に関する知識とそれらを踏まえた実際の対応方法を身につけることを目的にしています。
【学習内容】
- 認知症の人を取り巻く現状
- 具体的なケアをする時の判断基準となる考え方
- 認知症の人を理解するために必要な基礎的知識
- 認知症ケアの基礎的技術に関する知識と実践上の留意点
認知症介護基礎研修の難易度は?筆記試験はある?
無資格や未経験の介護従事者、認知症ケアに慣れていない介護従事者向けの講義ですので、研修内容は分かりやすく理解しやすいものになっています。
また修了試験は実施されず、受講修了によって受講証明書が発行されるため難易度は高くありません。
認知症介護基礎研修の具体例をご紹介
以下に例として、東京都と大阪府の認知症介護基礎研修の概要をご紹介します。
■東京都(2023年11月14日時点)
【受講要件】
東京都内(*八王子市除く)の介護保険施設・事業者等が介護保険サービスを提供する事業所において、介護に直接携わる職員のうち医療・福祉関係の資格を有さない者等
※既に医療・福祉関係の資格をお持ちの方もご受講いただけます。
*八王子市内に所在する介護保険施設・事業所等については八王子市所管課へお問い合わせください。
【研修方法】
仙台センターを研修実施機関として指定し、eラーニングで実施します。
受講を希望される方は、仙台センターへ直接申込みを行い、研修を受講することとなります。
【受講料】3,000円
参照元 東京都認知症介護研修の概要
■大阪府(2023年11月14日時点)
【受講要件】
介護保険施設・事業者等が当該事業を行う事業所(大阪府内(※大阪市内及び堺市内を除く)に所在する事業所)において、介護に直接携わる職員のうち医療・福祉関係の資格を有さない者等。
【研修方法】
自学習(eラーニング)150分程度
【受講料】3,000円
参照元 大阪府:認知症介護基礎研修シラバス
参照元 大阪府:認知症介護基礎研修
認知症介護基礎研修からのステップアップは?
認知症介護基礎研修は、その名前の通り“認知症の基礎”について理解し学ぶものです。そのため奥深い認知症ケアをさらに理解し実践スキルを高めるには、以下のような研修を受講しステップアップすることが必要です。
認知症介護実践者研修
認知症介護基礎研修よりも専門性の高い認知症介護の理念や知識及び技術を修得し、認知症ケアのエキスパートを目指す研修です。
原則、身体介護に関する知識、技術を修得しており、概ね実務経験2年程度の者が対象です。
認知症の状態や取り巻く環境は個々により異なります。研修受講によって本人、家族のQOL向上や適切なアセスメント、認知症ケアの実践技術を身につけます。
研修機関は講義・演習で6~7日、自施設実習が2~4週間程度で2~3カ月かけ学ぶケースが多いですが、実施主体となる各都道府県の指定や委託を受けた各機関によって受講条件やカリキュラムの内容が異なります。認知症介護基礎研修と同様に、受講される方は事前に確認が必要です。
認知症介護実践リーダー研修
認知症介護実践者研修を修了した方が、認知症介護において事業所内のケアチームで適切なケアを提供するためのリーダーを育成する研修です。
概ね5年以上の実務経験があり、チームのリーダーになることが予定され、実践者研修を修了して1年以上経過した者が受講の対象です。
実施する各都道府県の指定や委託を受けた事業所によって、受講申込の時期やスケジュール、受講費用は異なり、無料で受講できるところから5万円以上かかるところもあります。
講義・演習で8~10日間程度・他施設実習は3~5日程度の実習・自施設実習では4週間程度のスケジュールで課題に取り組み、全カリキュラム修了まで3カ月程度かけ学びます。
受講を検討している方は、受講方法や受講スケジュールなど事前に確認しましょう。
認知症介護指導者養成研修
認知症介護指導者養成研修は、都道府県・指定都市が実施する認知症介護基礎研修及び認知症介護実践研修を企画・立案し、講義、演習、実習を担当することができる能力を身につけるとともに、介護保険施設・事業者等における介護の質の改善について指導することができる者を養成することを目的とした研修です。
受講の対象者
- 社会福祉士、介護福祉士等の資格を有する者又はこれに準ずる者
- 認知症介護実践者研修を修了した者又はそれと同等の能力を有すると都道府県等が認めた者
- 地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている者等のいずれの要件も満たす者
認知症介護指導者が所属する事業所には、認知症専門ケア加算Ⅰ、Ⅱが算定されますので事業所からのニーズが高い研修です。
参照元 認知症介護基礎研修の受講の義務づけ(P12)
キャリアアップを目指すならまずは初任者研修がおすすめ
介護業界でキャリアアップをお考えの方であれば、初任者研修の受講をおすすめします。
なぜならば、初任者研修を修了することでキャリアアップのスタートラインに立つことができるからです。
認知症介護基礎研修は無資格者を対象にした研修ですが、先述した通り、それ以降のステップアップ資格には何らかの有資格者でないと受講が難しくなります。
特に認知症介護指導者養成研修の受講資格は、介護福祉士またはそれに準ずる資格が求められます。
以下の図は、介護のキャリアパスを分かりやすくまとめたものです。
図からも分かるように介護福祉士を目指すには、一般的にまず初任者研修を受講することからはじまります。キャリアアップの詳しい内容については初任者研修の講座情報をご覧ください。
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改めて介護職員に不安が多い認知症ケアとは?
認知症になると、新しい情報や短期記憶から失われ、長期記憶や子育て、働いていた頃の一番輝いていた時期などの記憶は認知症が進行しても比較的残り続けるといわれています。認知症の症状はその人によって大きく異なり、軽い物忘れから徘徊、せん妄、帰宅願望、暴力行為と様々です。
またその症状の現れ方や程度は日内変動(1日のなかで変動すること)する場合も多く、「認知症の人への接し方が分からない」「どうしたらいいケアができるの?」と、悩む介護職員は多いです。
特に、未経験・無資格から介護業界に入った方は、初めて見る光景に驚くこともあり、介護者のストレスになることもあります。
- 認知症っていったいなに?
- どんな症状なの?
- どう接したらいいの?
そんな認知症ケアの悩みを解消し、安心感を与えるケアを学ぶための研修が、認知症介護基礎研修や初任者研修です。認知症の症状は十人十色ですが、認知症になっても自分らしく今まで通りの生活がしたいと望む方が多いはずです。認知症の方は、これまでの生活をベースに、認知症となった“いま”を生きています。
認知症になっても「感触」と「感情」は最後まで壊れることのない2つの機能だとされ、「認知症だから」ではなく、その人らしさに寄り添った適切な認知症ケアの実践が大切です。認知症介護基礎研修や初任者研修によって、このような認知症の相手の世界を知ることができます。
まとめ
認知症介護基礎研修の概要や資格の取り方、初任者研修との違い、ステップアップの資格などについて説明しました。無資格の方が認知症ケアについて学ぶ研修には主に認知症介護基礎研修と初任者研修の二つがあります。認知症介護基礎研修と初任者研修のどちらを受講すべきかお悩みの方には初任者研修をおすすめしています。
カイゴジョブアカデミーでは、お手頃価格で初任者研修を開講しています。さらに、資格取得と就業サポートを自己負担なしで受けられる介護職デビューキャンペーンも実施しています。認知症ケアに特化したグループホームなどへの就業支援の実績も豊富です。ぜひカイゴジョブアカデミーの初任者研修で専門的な認知症ケアについて学び、その後の就職活動やお仕事に資格を活かしてみませんか?
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- この記事の著者 吉田あい
- プロフィール
- 大阪府出身。現役のケアマネージャー
専門は「高齢者介護論」「社会福祉援助技術論」「介護現場におけるリスクマネジメント」
特別養護老人ホームや居宅介護支援事業所などの現場で、介護職を10年以上経験。介護講師経験3年。
WEBライターとして、介護・医療・転職・健康などのジャンルで執筆700本以上。
カイゴジョブアカデミーにて、介護の仕事や資格について、実体験を踏まえたお役立ち情報をお伝えします。
- 保有資格
- 介護支援専門員(ケアマネージャー)、介護福祉士、社会福祉士、メンタル心理カウンセラーなど
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この記事の監修者
カイゴジョブアカデミー
編集部
- 介護専門の資格講座学校「カイゴジョブアカデミー」の編集部です。
介護業界のプロフェッショナルが介護の仕事や資格に関するお役立ち情報をお届けします。