介護職は営業職からの転職に向いてるって本当?活かせるスキルは?
介護職は営業職からの転職に向いてるって本当?
営業職は就職しやすい反面、ノルマや多忙な業務から働き続けるのが難しい業界といわれています。なかなかうまくいかず、心身ともに疲れて転職を考える方は少なくありません。
そこで今回は、営業職からの転職先としておすすめの介護職をご紹介します。「営業職の経験しかないから」と自信のない方もいますが、実は営業職の経験は介護職での大きな強みになるのです。
併せて営業職から介護職へ転職するメリットや活かせるスキルなども具体的なエピソードを交えてお伝えします。介護職に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
-
受講費用*&
テキスト代 -
振替受講や
再試験代 -
就業
サポート
*初任者研修 または 実務者研修
目次
営業職から介護職へ転職する4つのメリット
営業職から介護職へ転職をおすすめする理由は、以下4つのメリットがあるからです。
1.ノルマのプレッシャーが少ない
営業職は常に数字や業務に追われ、営業ノルマ達成へのプレッシャーと戦う仕事です。営業ノルマのプレッシャーが仕事への活力になる方もいますが、それがストレスになる方にとっては心身の負担が大きく、鬱になる方も少なくありません。
一方介護職は、ケアマネジャーのケアプランに沿ったサービス提供を行います。生活相談員や介護施設のケアマネジャーが利用者獲得の渉外活動を行うことはありますが、ほとんど口コミや紹介などで利用者を獲得しているのが現状です。
そのため介護職自ら営業活動を行うことはほとんどありません。毎日数字に追われていた頃に比べて、心身ともにリラックスして仕事に取り組めることがメリットのひとつです。
実際に営業職から介護職への転職した方に話を聞いたところ、「営業をしていた頃は、一銭にもならない人間関係は認められない世界でした。人と話していても、心のどこかで計算している自分がいました。いまは余計なことを考えずに、純粋に人と接することができます」と話していました。
関連記事:違和感に向き合い、自分の道を見つけた。元営業職/運送ドライバーが50代後半で介護職にチャレンジし、見えてきた価値観
2.異業種転職でも正社員になりやすい
介護業界はどの施設でも人材不足で、求人募集が豊富です。これから超高齢社会に突入し、さらにニーズが高まる業界なので未経験の方でも正社員として採用されやすいのが特長です。
異業種からの転職は基本的に未経験者にとって狭き門ですが、介護業界は年齢や経験を問わずポテンシャルを重視してくれる職場が多いからです。職場によっては、無資格でも働くことができますが、有資格者の方が採用されやすい傾向です。はじめて介護業界で働く方は介護職員初任者研修を受講すれば、高待遇での正社員採用を目指せるでしょう。
介護職員初任者研修(旧:ヘルパー2級)を詳しくみる3.キャリアアップを目指せる
営業職のキャリアアップは、自社内で管理職を目指したり同業他社へ転職したりするなどがあげられますが、なかなか実現しない方がほとんどではないでしょうか。
介護職はキャリアパスが明確になっているので、これからどんなスキルや専門性を身に着けていけばいいのかが示されています。
未経験・無資格からスタートしても「介護職員初任者研修」や「介護福祉士」などの資格を取得していくことで、キャリアアップや資格手当で給与アップを目指せます。
介護職は「資格」と「経験」で給与が上昇するキャリア制度が整い、働いた期間が評価に結び付くので、未経験スタートでもキャリアアップしやすい職種です。
また実務経験を重ね「ケアマネージャー」へのポジションアップも目指せるので、将来性の高い仕事といえるでしょう。
介護職員初任者研修(旧:ヘルパー2級)を詳しくみる4.安定して働きやすい
介護を必要とする高齢者の増加に伴い、介護を担う人財のニーズは右肩上がりです。どの業種よりも求人が潤っているのは介護職といっても過言ではありません。コロナ禍において多くの企業で営業自粛や事業縮小、コロナ倒産が相次ぎ経済活動が停滞しましたが「どんな社会情勢であっても安定して働きやすい」のが医療・介護業界です。
注目すべきは医師や看護師といった医療従事者と違い、介護職は学歴や経験に関係なく、どなたでも短期間で専門資格を取ることができます。資格があれば全国どこへ行ってもニーズが高く、売り手市場です。
また、20代から70代までと活躍できる年齢層が幅広く、多様な働き方もできるので、年齢やスキルに合わせて安定して長く働き続けやすいというメリットがあります。
介護職で活かせる営業職3つのスキル
営業職で培ったスキルは、介護の仕事で役立つことが多くあります。介護職で活かせる3つのスキルは、以下のとおりです。
1.気配りや心配り
営業職の仕事は、自社で扱う製品やサービスを顧客に売り込むことです。しかし単に“ものを売る”だけではなく、顧客のニーズやライフスタイル等を考慮した上で相手の希望に合ったサービスを提案しなければいけません。
このような営業で培った気配りや心配りは、「相手の立場に立ち、寄り添うケア」を実施する介護業界で大いに役立ちます。
要介護の方や認知症の方は、自分の想いや希望をうまく伝えることができません。気配りや心配りができる方は、介護現場の状況や利用者さんの気持ちを汲み、適切なケアを提供できるでしょう。
2.リスクマネジメントスキル
営業職経験者の方の強みになるのは、事故を起こさないように予測するスキルです。例えば損保会社の代理店で法人営業として働いていた方は、担当企業に対して損害保険の提案やリスクを未然に防ぐための提案、指導などを行っていたかと思います。一方、介護職が介護現場で最も気を付けていることは、介護中の事故です。介護職は介護現場の状況確認や利用者の見守りを行い、事故が起こらないように気を付けています。
この営業職で培ったリスクマネジメントのスキルは、介護事故に対するリスクマネジメントの意識や視点、行動などにつながります。
3.コミュニケーション・接遇スキル
営業職はノルマや売上アップを重視しますが、その基本は顧客からの第一印象ではないでしょうか。言葉遣いや清潔感があってこそ、「この人に相談したい」と顧客は思い、営業成績につながるからです。
営業職の方は、お客様と常に対話しているため基本的なビジネスマナーや挨拶、清潔感など接遇スキルの基礎ができている方が多くいらっしゃいます。
介護職も同様に、コミュニケーションを大切にする仕事です。自分の表情や声かけひとつで相手の心身の状況に影響を与えるため、丁寧な接遇マナーは介護職の必須スキルなのです。そして利用者さんは人生の先輩である年長者がほとんどで、訪問介護など職場によっては自宅を訪問しサービスを提供することもあります。
家族や他職種との関わりが多いため接遇マナーが身に着いている方は重宝されるでしょう。
介護職への転職はメリットが多いが2つのデメリットもある
介護職へ転職するメリットについてお伝えしましたが、一方でデメリットが2つあります。
1.大幅な収入アップは期待しにくい
介護職から営業職へキャリアチェンジした際のデメリットのひとつは、収入面です。介護は営業職と比べて、ノルマを達成した後のインセンティブがあるということは基本的にありません。それが安定して働き続けられるというメリットにつながるのですが、インセンティブがやりがいだった方にとっては物足りないと感じるかもしれません。しかし介護業界の待遇・給与は改善傾向にあります。
営業職のように大きな金額を貰える業界ではありませんが、介護人材定着や介護職の待遇改善が推進され給与水準は年々上昇傾向にあるので、介護職転職のタイミングとして良はい時期といえるでしょう。
2.シフト勤務に慣れるのに時間がかかる可能性も
営業職の方は会社によってフレックスタイム制で働いていた方も多いかと思います。フレックスタイム制では自分に合った出勤時間を決めたり、営業中に少しリラックスする時間をとったりと比較的時間を自由に使えていたのではないでしょうか。しかし介護職は職場によって異なりますが、多くはシフト勤務となります。そのためフレックスタイム制に慣れていた方は時間的な余裕が減ってしまったり、営業職時代に比べて柔軟な働き方が難しくなるかもしれません。
筆者の体験談 営業職からグループホームに転職したOさんの事例
営業職出身の方が介護職として活躍されているエピソードをご紹介します。
筆者が勤務していたグループホームに、元営業職のOさん(30歳)が転職されてきました。新卒で医療機器の営業職として働いていましたが、日々の業務やノルマがストレスになり心身の不調から1年休職した後に退職。生活を継続していくため、正社員として働くことができる仕事を探して介護職を選ばれたそうです。
ではOさんのエピソードをお話したいと思います。
介護職転職で心のゆとりがもてたOさん
医療機器の営業職時代は医師の診察に立ち会いながら患者のデータを確認し、機器の提案などを行っていました。機器に不具合があったり医師から呼び出された際には、休みの日でも出勤しなければいけなかったそうです。そのため休日でもスタンバイしているような状況で仕事中心の生活、「プライベートの時間を持てなかった」とのことでした。また、医療知識も学ばなければいけなかったので寝る時間がなかったことも体を壊した原因につながったと話されていました。
慣れないシフト勤務で大丈夫かな?と心配していましたが、シフト時間に合わせた規則正しい勤務ができたこと、そして休日はしっかり休めたことで以前に比べてストレスなく仕事に取り組むことができました。仕事を始めた当初は営業職時代の疲労感が残った様子でしたが、1週間・1カ月と働くことで笑顔が増え元気に!
以前は昼食をとる時間がないこともあったと話していましたが、グループホームでは利用者さんと一緒に食事をするため毎食しっかりと食べることができ、少しふくよかに。健康的な生活になり、趣味の音楽などプライベートを楽しむ心のゆとりももてたようです。
対応力抜群のOさん
介護の仕事は、ただ目の前の人をケアすることだけではありません。家族やケアマネジャー、他職種への対応、電話対応など人との関わりが多い職種です。
Oさんは長年営業マンとして活躍されてきた中で、ビジネススキルやコミュニケーションスキルを身に着けてこられました。電話や来訪者にも丁寧に対応し、家族様からも「分かりやすく説明してくれて優しい」と評判は上々でした。これまでOさんが培ってきた当たり前のビジネスマナーや相手の立場に立ちニーズに合わせた対応力は、介護現場での大きな強みになっています。
相手を尊重したケアで介助をスムーズにしたOさん
つい流れ作業になりがちな介護の仕事ですが、Oさんはひとつひとつの業務をいつも丁寧に行っています。認知症のため会話が難しい利用者様もいますが、利用者様にとってどんな介助が良いのか、望んでいることはなにかを対話し探っていきます。
とある気難しいタイプの利用者Aさん。
以前は高校教師をされ、介護職に対しても“先生”のような対応でした。そんなAさんは、一部の介護職から「怖い」「いつも怒られる」と敬遠されていました。しかしOさんはAさんの立場を尊重し、“先生”として接しました。介助をする前はAさんに指示をもらいながら、Aさんが最適なケアを提供するようにしました。するとAさんは「自分のことを考えてくれている」と、スムーズに介助を行えるように。Oさんに「丁寧なケアですごいね」と伝えると、「“先生”には慣れてますから!」と。
当たり前のように相手のニーズを汲み取る、相手を尊重し寄り添うといったスキルを身に 着けているのは「営業職時代があったからこそ」と話していました。目の前で向き合う人を大切にしているOさんです。
営業力を活かすOさん
ある日家族様が面会に来られ「知り合いが施設を探しているんだけど、ここどうかしら?」と、業務をしていたOさんに雑談の中で質問しました。家族が入居しているものの客観的な意見が欲しかったそうです。Oさんは、当施設の特徴や強みを伝え、どんなことがその方にとってメリットになるか伝えたそうです。私も対応に入り一緒に話をしたのですが、入居を検討している方の様子を聞いた上で「入居につながる」と思いながら話されたそうです。
家族が入居しているといっても利用者様によって合う・合わないがありますので、その方の背景を考慮しながら入居の提案をしなければいけません。Oさんはそんなことも考えながら雑談されたそうです。さすが医療機器の営業マンをされた経験があるな、と感じたエピソードです。
まとめ
営業職から介護職へ転職するメリットや活かせるスキルなどを紹介しました。
営業職はお客様のニーズを把握し提供できる製品やサービスの価値を伝え、顧客獲得につなげる職種です。
心身ともにハードな職種なので長く働き続けることは大変な仕事ですが、営業職で身に着けた相手のことを考え行動するスキルや気配り、心配りは介護の現場で役立つスキルとなります。
数字やノルマに追われることなく利用者様とのコミュニケーションや笑顔がやりがいにつながり、活躍できる人材を目指すことができるでしょう。
カイゴジョブアカデミーでは介護の基本的な知識とスキルを学べる介護職員初任者研修を開講しています。営業職で培ったスキルとともに介護のスキルを身に着け、介護職の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?
- この記事の著者 吉田あい
- プロフィール
- 大阪府出身。現役のケアマネージャー
専門は「高齢者介護論」「社会福祉援助技術論」「介護現場におけるリスクマネジメント」
特別養護老人ホームや居宅介護支援事業所などの現場で、介護職を10年以上経験。介護講師経験3年。
WEBライターとして、介護・医療・転職・健康などのジャンルで執筆700本以上。
カイゴジョブアカデミーにて、介護の仕事や資格について、実体験を踏まえたお役立ち情報をお伝えします。
- 保有資格
- 介護支援専門員(ケアマネージャー)、介護福祉士、社会福祉士、メンタル心理カウンセラーなど
-
この記事の監修者
カイゴジョブアカデミー
編集部
- 介護専門の資格講座学校「カイゴジョブアカデミー」の編集部です。
介護業界のプロフェッショナルが介護の仕事や資格に関するお役立ち情報をお届けします。