介護職は理容・美容業界からの転職に向いてる?介護に役立つスキルとは
介護職は理容・美容業界からの転職に向いてるって本当?
「おしゃれが好き」「人を笑顔にしたい」と憧れて理容・美容業界に入った方は、多いのではないでしょうか。しかし美容業界の実情といえば「休みが少ない」「将来が不安」「給料が少ない」と決して楽な仕事とはいえず、転職を考える方は少なくありません。
「美容師時代のように誰かの役に立つ仕事がしたい」と思う方は、介護業界への転職がおすすめです。未経験でも様々な職歴の方が活躍している介護業界は、美容師で培った様々なスキルを活かすことができるからです。
そこで今回は美容業界から介護職へ転職するメリットや活かせるスキルなどを紹介します。介護職に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
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*初任者研修 または 実務者研修
目次
理容・美容業界から介護職へ転職する3つのメリット
理容・美容業界から介護職へ転職する理由は、大きく3つのメリットがあります。
1.安定した給料
理容師や美容師の給料は職場によって異なりますが、基本的に固定給+インセンティブを採用されることが多いです。国税庁が発表している「令和2年民間給与実態統計調査」によると、美容師の給料は以下のとおりです。
理容師・美容師はサービス業になるため、平均給与353万円という結果が出ています。
(平均給与の内訳)
平均給料+手当:314万円
平均賞与:38万円
一方で医療福祉職(介護職)の平均給与は397万円となり、理容師・美容師の給料と比べるとやや高めです。
(平均給与の内訳)
平均給料+手当:342万円
平均賞与:55万円
理容・美容業界の給料は他の職種と比べて少なく「仕事と給料が見合わない」「将来的に不安」といった理由から転職される方がいらっしゃいます。介護職も低賃金とされていましたが、介護人材定着や介護職の待遇改善によって給与は増加傾向にあります。
そのため介護職に転職することで理容・美容業界よりも安定して高い給料を得られるケースもあります。
2.将来性
美容師の中には「将来自分のお店をもちたい」と独立開業を目指している方がいます。しかし仕事と給与が見合わないと転職してしまったり、資金が足りずキャリア途中で断念する方も少なくありません。また、自分のお店をオープンできたとしても利益が継続せず、閉店してしまうケースも少なくありません。理容師・美容師としての将来性やキャリアに不安を持っている方は、将来安定した職に就きたいと転職を考える方がいらっしゃいます。
介護職は、スキルや専門性を身に着けていく過程であるキャリアパスが明確です。未経験・無資格からスタートしても「介護職員初任者研修」や「介護福祉士」などの資格を取得していくと、キャリアアップや資格手当で給与アップを目指せます。
また「介護職員等特定処遇改善加算」がもらえれば、より収入アップにつながります。
このように介護職は、「資格」と「経験」で給与が上昇するキャリア制度が整っています。「ケアマネージャー」へのポジションアップも目指せる将来性の高い仕事といえるでしょう。
介護職員初任者研修(旧:ヘルパー2級)を詳しくみる3.理容・美容業界のスキルや経験を活かすことができる
理容・美容業界で培ったスキルは、カットやスタイリングの技術以外にも多く、中には介護職への仕事で役立つことも多くもあります。
・コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルはどんな仕事においても重視されるスキルのひとつです。理容師・美容師は様々な方と接客する中で、コミュニケーションスキルが磨かれます。
「初対面のお客様とスムーズに会話し、ニーズを汲み取り、サービスを提供する」
これは介護の仕事で大いに役立つスキルです。利用者の心身の安定や自立促進、居心地のよい環境作りに活かすことができるでしょう。
なおかつ理容・美容業界で仕事をされていた方は、ビジネスマナーや笑顔での対話に優れている方が多いです。コミュニケーションスキルは介護職へ転職する際の大きな強みになるでしょう。
・ホスピタリティ
介護職は、介護サービス+αのケアを提供する仕事です。理容・美容業界も同様に、「より満足していただけるように」という気持ちで、お客様のニーズに付加価値をつけたサービスを提供しています。利用者のニーズを満たすことはもちろん、「笑顔で心地よく過ごしていただきたい」といった気持ちにつながるホスピタリティ精神が大切です。理容・美容業界で培ったホスピタリティ精神は、介護の仕事の気配りや心配りにつながる重要なスキルとなるでしょう。
実際に美容師から介護職に転職した方に話を聞いたところ、「美容師は髪を切る何分かのわずかな時間に、『こんなことを言ってほしいのでは?』と見抜く力が必要で、それは介護でも活かせる」と話していました。
関連記事:職歴30年以上のベテラン美容師が、介護職に転身した理由
・提案力
理容・美容業界の仕事は、お客様の希望をもとに髪質や自宅でのスタイリング、トレンドなども考慮し、その人に最適なヘアスタイルを提案します。相手のことを理解しようとする姿勢やクリエィティブな提案力は、新しい視野を求める介護職で期待されるスキルです。
・洗髪のスキル
理容・美容業界出身の方の大きな強みは、洗髪のスキルです。新人やアシスタントの頃は、毎日シャンプーばかりしていたという方も多いかと思います。介護の仕事のひとつである「入浴介助」は、洗身と洗髪、乾髪を行います。清潔保持と感染防止の面で欠かせないケアのひとつですが、特に洗髪は介護者の技術次第で利用者から拒否されることもあるケアです。手早く、適度な力で洗髪を行う理容師・美容師のスキルは、介護の仕事で活かすことができるでしょう。
筆者の体験談 独立美容師からデイサービスに転職したHさんの事例
美容業界出身の方が介護職として活躍されている事例をご紹介します。
以前働いていたデイサービスで、美容師のHさん(45歳)が転職されてきました。Hさんは美容学校卒業後、長年美容院で働き、30代で独立開業。経営は軌道にのっていましたが、Hさんのお母様が介護を必要とする状態になり在宅介護が始まったことをきっかけに閉店されました。
在宅介護をする中でヘルパー2級(現 介護職員初任者研修)の資格を取得されたHさん。お母さまの介護施設入居が決まり、介護技術を生かしたいとデイサービスに転職を決めたそうです。
ではHさんのエピソードをお話したいと思います。
介護職員初任者研修(旧:ヘルパー2級)を詳しくみるHさんが入浴担当の日は入浴拒否が少ない
「やっぱり美容師さんはすごい!」と筆者が感じたのは入浴介助の洗髪と乾髪です。先述しましたが、スピーディーで丁寧なシャンプーは利用者からも大人気。中には髪の毛を洗ってもらいながらウトウトされる方もいらっしゃいました。力加減や洗い方など、美容師さんならではのスキルが印象的でした。
また、乾髪においてもそのスキルは発揮されました。同じドライヤーを使って乾かしているのに、Hさんが乾髪すると美容院帰りのようなまとまりのある上品な髪型になっているのです。Hさんにとっては当たり前のことを当たり前にしているだけなのですが…
日ごろ、自由に美容院へ通えない利用者にとっては「(元)美容師のHさんに髪の毛を整えてもらった」というのも嬉しかったようです。 デイサービスに来所してすぐに「今日の入浴だれ?」「Hさんやったら入るわ」と言う方もいました。
美容師の提案力とスキル
介護度が高く自宅での入浴が難しい方は、デイサービスで入浴することが利用目的のひとつです。中には入浴が嫌いな方もおられ、入浴はできないもののやっと手浴や足浴ができた方もいます。しかし、家族からは「せっかくデイサービスへ行っているのに入浴できずに帰ってきた」とクレームが来ることも…
そんなときにHさんが転職され、入浴拒否の方に対して「髪の毛だけでも洗いましょう」と提案。「美容院みたいに洗いましょうか」というと、なんとOK!浴室まではいけなかったので、脱衣所にある洗面台をシャンプー台変わりに洗髪しました。デイサービス利用開始から3カ月目にして、やっと髪の毛が洗えたのです。
首にホットタオルを置き、シャンプーされている利用者さんは「気持ちいい」と夢の世界へ。やっぱりプロの話術とスキルはすごいな、と感じた事例です。
夏祭りも大盛り上がり
デイサービスは敬老会や誕生日、クリスマスはじめ、毎月季節に応じたイベントや毎日レクリエーションを開催します。私が働くデイサービスの一大イベントといえば夏祭りで、家族や地域の方を招待し盆踊りや縁日ゲーム、屋台を行います。元美容師のHさんは着付けのスキルももっているので、「今年はHさんに着付けをしてもらって利用者さんにも浴衣を着てもらおう」ということになりました。Hさんの着付けで、希望された利用者さんに浴衣を着てもらいました。「昔は着物ばっかり着ていたのよ」と話される方もおられ、華やかな雰囲気で家族様も喜ばれた1日でした。
コミュニケーションと対話力
Hさんはいつも明るくエネルギッシュな方なので、元気がない利用者様もHさんとお話することで活気と笑顔がみられました。そして「楽しかった」と帰宅される方が多くいらっしゃいました。また利用者様だけでなく家族様の良き相談相手、スタッフ間のムードメーカーとしてデイサービスを盛り上げてくださいました。
その後Hさんは、介護福祉士とケアマネージャーの資格を取得。コミュニケーション力と対話力を生かし有料老人ホームのケアマネージャーとして活躍されています。Hさんの親しみやすさや人との絶妙な距離感は、現在の仕事の営業力につながっています。
介護業界に美容の視点が重視されている
“介護”というと排泄や食事、入浴など日常生活で必要なケアを提供すること。いわゆるADL(日常生活動作)のサポートを中心としたケアというイメージされる方が多いのではないでしょうか。
介護が必要な状態になれば、これまでのように好きなタイミングで美容院へ行けない方が多く、美容の自由が制限されてしまいます。しかし「高齢になってもおしゃれを楽しみたい」「これまで通りお化粧をしたい」という方が増えています。いくつになってもきれいでいたいのは当たり前で、ちょっとしたおしゃれが元気の源や生きがいにつながります。
年齢を重ねても自分らしく生活したい=QOL(生活の質)を高めるケアが注目され、レクリエーションの一環としておしゃれを楽しむ時間を提供している介護施設もあります。
そこで利用者様はハンドマッサージやネイルケア、メイク、スタイリングなどを楽しまれています。理容・美容と介護の視点は、利用者の暮らしを支える大きな強みになるでしょう。
まとめ
理容・美容業界から介護職へ転職するメリットや活かせるスキルなどを紹介しました。理容・美容業界は訪問美容(理容)や介護美容など、介護業界へ事業展開しているところも多くみられます。また、介護人材のニーズが注目されているいま、美容業界から介護職へ転職を検討される方は少なくありません。
多くの方がこれまで培ったホスピタリティ精神やコミュニケーションスキルを強みに活躍されています。
介護職に関心のある方は、ぜひカイゴジョブアカデミーが開講している介護職員初任者研修で介護の知識とスキルを身に着け、介護業界に一歩踏み出してみませんか?
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受講費用*&
テキスト代 -
振替受講や
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就業
サポート
*初任者研修 または 実務者研修
- この記事の著者 吉田あい
- プロフィール
- 大阪府出身。現役のケアマネージャー
専門は「高齢者介護論」「社会福祉援助技術論」「介護現場におけるリスクマネジメント」
特別養護老人ホームや居宅介護支援事業所などの現場で、介護職を10年以上経験。介護講師経験3年。
WEBライターとして、介護・医療・転職・健康などのジャンルで執筆700本以上。
カイゴジョブアカデミーにて、介護の仕事や資格について、実体験を踏まえたお役立ち情報をお伝えします。
- 保有資格
- 介護支援専門員(ケアマネージャー)、介護福祉士、社会福祉士、メンタル心理カウンセラーなど
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この記事の監修者
カイゴジョブアカデミー
編集部
- 介護専門の資格講座学校「カイゴジョブアカデミー」の編集部です。
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