介護職は清掃業界からの転職に向いてるって本当?
介護職は清掃業界からの転職に向いてるって本当?
清掃業は資格や経験、年齢問わず働ける求人が多いため人気が高い職種です。しかし一方で心身の負担や給与面に不満をもち離職される方も少なくありません。そこで清掃業界からの転職で注目されているのが介護職です。介護職はスキルやキャリアに関わらず転職者への門戸が広く、清掃業で培ったスキルで活躍されている方がたくさんいらっしゃいます。
なぜ介護職が選ばれるのか、今回は清掃業界から介護職へ転職するメリットや活かせるスキルなどを紹介します。介護職に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
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受講費用*&
テキスト代 -
振替受講や
再試験代 -
就業
サポート
*初任者研修 または 実務者研修
清掃業界から介護職へ転職する4つのメリット
清掃業界から介護職へ転職する理由は、以下4つのメリットがあります。
1.規則正しい生活が送れる
清掃業は職場によって、早朝や深夜に仕事を行うことがあります。公共施設やビルなどは開館前や閉館後に出勤するため、規則正しい生活を送りたい方にとって身体的にきつい仕事と感じるでしょう。一方介護職は基本的にシフト勤務となりますが、施設形態によって9時~17時というように規則正しい勤務が可能です。そのため介護職は、ライフワークバランスのとれた働き方がしたい人にとって、働きやすい職種といえるでしょう。
2.清掃業から収入アップが可能
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」によると、清掃業における平均年収は以下の通りです。
●ビル清掃:265.1万円
●客室清掃・整備担当(ホテル・旅館):320.1万円
●ハウスクリーニング:388.4万円
一方で医療福祉職(介護職)の平均給与は397万円となり、清掃業の給料と比べるとやや高めです。
(平均給与の内訳)
平均給料+手当:342万円
平均賞与:55万円
注目すべきポイントは、清掃業界は将来的に大幅な給料アップは見込みにくいという点です。そのため、「仕事と給料が見合わない」「将来的に不安」といった理由から転職される方がいらっしゃいます。
以前は介護職も低賃金とされていましたが、介護人材定着や介護職の待遇改善によって給与水準は上昇傾向です。そのため介護職に転職することで安定して高い給料を得られるケースもあります。
3.キャリアアップできる将来性
清掃業は需要が高い一方で業務内容と給与が見合っていないケースが多く、資格を取得しても給与アップになかなか結び付かない職種です。清掃業として独立を目指す方もいますが、競合との差別化や集客の難しさから諦める方もいます。介護職は、スキルや専門性を身に着けていく過程であるキャリアパスが明確です。未経験・無資格からスタートしても「介護職員初任者研修」や「介護福祉士」などの資格を取得していくと、資格手当で給与アップを目指せます。
このように、介護業界は「資格」と「経験」で給与が上昇するキャリア制度が整い、「ケアマネジャー」へのポジションアップも目指せる将来性の高い仕事です。
このように、介護職は未経験から目指すことができ、キャリアアップしやすい職種といえるでしょう。
介護職員初任者研修(旧:ヘルパー2級)を詳しくみる4.コミュニケーションがやりがいにつながる
清掃業は基本的にチームで仕事をする現場となりますが、清掃の作業自体は一人で進めていくことが多いです。決められた業務を淡々とこなしていく仕事なので「人と接するのが苦手」という方でも働きやすい仕事です。しかし人との関わりが少ないことから、清掃業の仕事に対して「やりがいが感じられない」と感じる方も少なくありません。介護の仕事は相手の気持ちに寄り添い信頼関係を築いていく仕事であり、コミュニケーションによって利用者1人ひとりの生きがいにつながります。
対人援助の仕事は難しいこともありますが、「ありがとう」という言葉や笑顔がみられたとき大きなやりがいを感じられるでしょう。
介護職で活かせる清掃業の3つのスキル
清掃業界で培ったスキルは介護の仕事で役立つことも多くあります。介護職で活かせる清掃業の3つのスキルは、以下のとおりです。
1.衛生管理・環境整備の知識や技術
清掃業では多様な清掃ニーズに対応し、清潔で快適な空間を提供されています。安全に利用できるように感染防止に配慮された環境整備や消毒作業などをされていた方も多いでしょう。介護現場では、新型コロナウイルスの感染拡大防止だけでなくインフルエンザやノロウイルス、疥癬など日頃から衛生管理や感染防止の面から環境整備を重視しています。
例えば感染対策における手指消毒の方法やグローブの着脱方法など、清掃業界や介護業界では当たり前の動作ですが、一般的には知らない方が多いのが現状です。そして入職後にイチから指導しても、スムーズに行えるようになるまで時間もかかります。しかし清掃業界出身の方はすでに体に染みついているスキルであり、介護現場側としても「感染防止対策について理解してくれている」という安心感があります。
清掃業で身に着けた環境整備の知識やスキルは、介護現場で多いに活かすことができるでしょう。
2.効率性
清掃の仕事は限られた時間の中で効率良く作業を進めていかなければいけません。仲間と協力しながら複数のことを同時に進めたり、優先順位を意識して仕事をされていた方が多いかと思います。介護職も同様で、訪問介護は特にケアプランで決められたサービス提供時間内に必要なケアを実施しなければいけません。利用者のニーズや効率性を考えながら、的確に仕事をこなしていく必要があります。
清掃業をされてきた方は効率性や時間管理力に優れているため、介護の仕事でも作業の順序やポイントを押さえ段取り良く進めることができるでしょう。
3.清掃スキル
清掃業だった方の最大の強みは、清掃(掃除)スキルです。
快適な空間の維持を提供するために身に着けた掃除や整理整頓のコツ、掃除の裏技は、介護業務に活かすことができます。介護現場は慢性的な人材不足で、日々の介助で精いっぱいという職場も少なくありません。フロアーや居室の清掃を業者に依頼しているところもありますが、多くは介護スタッフが業務の一環として掃除を行っています。介護施設は特に排泄やオムツなどの“臭い”に気を付けていますが、行き届かない部分や不十分な面も多々あるでしょう。清掃の専門的な知識やスキルがあれば、プロ目線での掃除を行うことができます。人が多く出入りする施設は「清潔さ」が、その施設の印象を左右する重要なポイントとなります。
介護職へキャリアチェンジすることで清掃スキルをもったプロとして、大いに活躍できるでしょう。
筆者の体験談 清掃業からグループホームに転職したAさんの事例
清掃業界出身の方が介護職として活躍されている事例をご紹介します。
筆者が勤務するグループホームに、元清掃業のAさん(50歳)が転職されてきました。ビルや病院などの清掃の仕事をされていましたが、親の介護をきっかけに介護職員初任者研修を取得されました。介護していた両親が亡くなり、身に着けた知識やスキルを活かしたいとグループホームに転職を決められました。
ではAさんのエピソードをお話したいと思います。
プロ目線の細やかな清掃スキル
グループホームの掃除は、日中手が空いているときや夜勤中に介護職員が行っています。そのため突発的な出来事があると、掃除にまで手が回らずに数日経過してしまっていた…ということがありました。また、介護記録の整理や物品管理ができておらず乱雑なままということも少なくありません。
そんなときAさんの清掃スキルが発揮されました。短時間で効率良くフロアーや居室の掃除をこなし、乱雑だった介護記録や物品倉庫まで整理整頓されていきました。そして食器棚も取り出しやすいように配置を提案してくれたり、キッチンの清掃も。油汚れがひどかったコンロやグリルが驚くほどにピカピカに!介護スタッフの気持ちとしては「掃除したい、汚れがきになる、だけど時間が足りない」と、100%の掃除を諦めている部分もありました。
しかしAさんの効率の良く掃除する裏技を教えてもらうことで、スタッフ間で共有され快適な空間を維持することができるようになりました。
利用者目線に立った整理整頓
認知症でタンスの中の衣類を全てベッドの上に並べてしまう利用者さんがいましたが、Aさんがケアに入り一緒に整理整頓。衣類が分かりやすいようにタグ付けや色分けをしてくれました。利用者さんも一緒に整理整頓したことで落ち着かれることが多くなり、全ての衣類をひっくり返すことが少なくなりました。これまでスタッフが行っていたケアといえば、「ひっくり返った居室内の衣類を、利用者さんが見ている際に、スタッフが急いでタンスに入れる」ことでした。
整理収納アドバイザーの資格を持っているAさんは、利用者さんがご自身で整理整頓することの大切さを理解していたのです。ケアプランには「一緒に整理整頓をする」と記入していましたが、実際には「自分(介護職)がやった方が早い」と介護職主体のケアになっていたのです。
このことはカンファレンスを行い、再度利用者さんと一緒に衣類を片付けることを再度共有することになりました。
感染症予防のリーダー的存在
冬が近づくと介護スタッフが恐れていることが、インフルエンザやノロウイルス等の感染症です。どれだけ予防策を講じていても、家族やスタッフ、他職種が持ち込んでしまうケースもあり完全な予防は難しいものです。
ある冬、ノロウイルスが1人の利用者さんから発生。(面会に来られた家族さんが胃腸炎だったと後で分かりました)
そして次々と他の利用者さんやスタッフまで発症し、元清掃業のAさん・元教師のNさん・介護職数名・そしてケアマネの私しか動けるスタッフはいませんでした。出勤し、この事実を知ったときに「絶望的!」とさえ感じました。
少ないスタッフで感染対策を話し合い、Aさんは清掃業のスキルを活かして感染防止に配慮された環境整備や消毒作業を徹底してくれました。
介護経験の浅いスタッフは“グローブの着脱の仕方”さえも不十分…
キャリアのあるスタッフは、利用者さんのケアや感染対策に必死で指導にまで手が回らない中、Aさんが率先して指導してくれたのです。Aさんからアドバイスいただいたことを申し送りし、スタッフに情報共有し、なんとかノロウイルスを終息させることができました。
夜勤で発揮されるAさんの清掃スキル
夜勤業務をするようになったAさん。
他のスタッフと同様に、夜ケアの合間にフロアーの掃除をしてくれます。翌日出勤してすぐ、「こんなところまできれいになっている!」と驚くことがたくさんありました。
通常なら椅子をテーブルに上げフロアーの拭き掃除や脱衣所、トイレなどを掃除するのですが、オムツを収納する倉庫や物品倉庫まで整理整頓されていることもしばしば。介護日誌や口腔ケア用品の棚もピカピカになり、分かりやすいように揃えられている。椅子やテーブルの裏も拭き、ほうきやモップまできれいになっているのです。
介護スタッフが当たり前にしなければいけないことなのですが、利用者の対応や業務に追われてできないことはもちろん、「Aさんが注目する部分の掃除」まで目が行き届かないのです。
「やはりプロの目線は違う、これを学び清潔な環境を作り上げていかなくてはいけない」と感じたエピソードです。
まとめ
清掃業界から介護職へ転職するメリットや活かせるスキル、活躍の事例などを紹介しました。清掃業界から介護職へ異業種転職する方は、これまで身に着けたスキルやキャリアが強みとなり仕事に活かせる、ということがお分かりいただけたかと思います。
先述したように、介護施設における清潔さは施設の印象を左右します。乱雑に物品が置かれ臭いがあり、埃が目につく介護施設は“いい介護現場”とはいえません。施設の不衛生な環境は、ブラック施設の代名詞ともいわれています。もちろん介護職自身も清潔な環境作りを目指して日々の清掃に励まなくてはいけませんが、やはりプロの視点が求められています。
未経験からのキャリアチェンジは不安に感じる方もいらっしゃいますが、清掃スキルは現場での環境整備に大いに役立ちます。
清掃の知識やスキルを、ぜひ介護現場に伝えていただきたいのです。
ご自身の強みを生かし、安定して働くことができる介護職は、清掃業界からの転職におすすめの職種です。
カイゴジョブアカデミーで開講している介護職員初任者研修を修了すれば、介護の知識とスキルを身に着けることができます。ぜひ介護の資格取得をとり介護職を目指してみませんか?
- この記事の著者 吉田あい
- プロフィール
- 大阪府出身。現役のケアマネージャー
専門は「高齢者介護論」「社会福祉援助技術論」「介護現場におけるリスクマネジメント」
特別養護老人ホームや居宅介護支援事業所などの現場で、介護職を10年以上経験。介護講師経験3年。
WEBライターとして、介護・医療・転職・健康などのジャンルで執筆700本以上。
カイゴジョブアカデミーにて、介護の仕事や資格について、実体験を踏まえたお役立ち情報をお伝えします。
- 保有資格
- 介護支援専門員(ケアマネージャー)、介護福祉士、社会福祉士、メンタル心理カウンセラーなど
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この記事の監修者
カイゴジョブアカデミー
編集部
- 介護専門の資格講座学校「カイゴジョブアカデミー」の編集部です。
介護業界のプロフェッショナルが介護の仕事や資格に関するお役立ち情報をお届けします。