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介護事務とは?仕事内容と資格の取り方は?

更新日:2021/11/1

介護事務1

介護事務は、介護施設や介護事業所で介護報酬請求業務(レセプト)を行う介護業界の事務職です。
未経験の方や出産や育児でブランクのある方、家庭と仕事を両立したい女性から人気の高い職種で、
「介護事務ってどんな仕事?」「どうやって資格をとるの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

超高齢社会の中、ニーズが高まる介護事務の仕事内容や資格の取り方を、筆者の経験も含めて紹介します。
介護職に関心のある方、介護事務の資格取得を目指している方はぜひ参考にしてください。

介護事務ってどんな資格?その役割は?

介護事務は介護に特化した事務職ですが、介護保険制度がスタートした2000年よりニーズが生まれました。
介護保険サービスを提供する介護施設や介護事業所、居宅介護支援事業所では、日々の業務に加え介護報酬の請求を行わなければいけません。
介護報酬は、介護サービス事業所の収入となる経営の柱であり、介護事務は運営を支える役割をもちます。

介護事務職には、介護保険と介護報酬算定の知識とスキルをもち、適切に請求する能力が求められています。
介護サービス事業所によっては、管理者や介護職員が介護事務を兼務するケースも多いですが、本来なら高い専門性を要するため不可欠な存在といえるでしょう。

介護事務の仕事内容は?

介護給付費明細書の作成と、介護給付費請求業務が主な仕事内容となります。
病院やクリニック、歯科医院などの医療機関では“医療事務”が活躍していますが、それの介護版といってよいでしょう。
では、具体的な仕事をご説明します。

介護施設・介護事業所の介護報酬請求業務(レセプト)

介護保険サービスを提供する介護事業所や介護施設では、以下のような業務を行います。
サービス提供の1カ月の流れに基づいて、仕事内容を説明します。

【月末】
1カ月の介護サービスの提供が終わったら当月の請求を行います。
利用者ごとにサービスの利用日数や内容を精査し、介護給付費請求書と介護給付費明細書を作成します。
(国民健康保険団体連合会への請求業務は、月末締めで行い、翌月1日~10日に請求書と明細書を提出)

介護サービスを利用した利用者に対して、自己負担額として所得に応じた1割から3割の介護サービス利用料、食費など介護保険外サービスを利用した場合は自費分の利用料を含めて請求します。(請求書と領収書の作成)

【月初~10日まで】
介護施設や介護事業所は、国民健康保険団体連合会(国保連)へ介護サービスを提供した証となる介護給付費請求書と介護給付費明細書を提出します。
サービス提供を行った事業所は、国民健康保険団体連合会(国保連)へ7割から9割請求(介護給付費支払い)となります。

デイサービスやデイケアサービス等で働く介護事務は、月初めの仕事のひとつにケアマネージャーに対して介護サービス利用の実績を配布する業務も含まれる場合もあります。

介護事務業務や介護請求の流れに慣れるまで大変だと感じることもありますが、ゆっくりする時間もあるのでメリハリがある仕事ができるでしょう。

居宅介護支援事業所での介護報酬請求業務(レセプト)

居宅介護支援事業所も、介護事務の活躍の場のひとつです。
介護支援専門員が適切なケアマネジメントを行ったことに対して介護報酬が支払われ、介護サービス事業所と一対となる請求を行います。
「居宅介護支援介護給付費明細書」と「給付管理票(1カ月のサービス提供実績)」を作成し国保連へ提出します。

国保連は、介護給付費明細書と給付管理表に相違がないかを確認し、適切であれば介護報酬が算定され支払いとなります。

もし提出した書類やデータに不備があった場合や、介護サービス事業所側とケアマネージャーとの請求に相違があった場合は、“返戻”とされ介護報酬が算定されません。
適切な書類を提出するまで収入を得られないことになってしまいます。
介護事務が行う仕事は、事業所の運営に関わる責任の大きい仕事になります。

レセプト以外の事務仕事

介護事務は例えば、一般的な事務員と同様に受付や電話対応、備品の管理・発注、書類の作成なども行います。事業所や施設によっては、スタッフの労務管理、経理を任せられる場合もあります。
居宅介護支援事業所では、ケアマネージャーの補佐としてサポートも含まれていることも。

介護現場のサポート

こちらも職場によりますが、介護事務の仕事だけでなく、介護現場のサポートも含まれます。
事務員といってもデスクワークだけが業務ではない可能性も高く、介護補助としての働きも求められている場合もあり、中には介護職と同じような業務やシフトに入るところもあります。
介護事務として働く場合は、「介護職兼務」「介護事務専任」どちらなのか?どこまでが仕事内容なのかを事前に確認しましょう。

ただし、一般の介護職のようにシフトに入ることは少なく、人員が不足する場合の見守りや配膳の準備、イベントのサポートなどで手伝うケースが多いです。

介護事務の1日の流れは?


介護事務専任として、グループホームと小規模多機能型居宅介護2カ所で働くスタッフの1日の流れの例を紹介します。


8:30 出勤
8:45 朝礼(小規模多機能居宅介護)
9:00 朝礼(グループホーム)
    朝の申し送りでは、当日の予定や介護保険の更新の方の確認、請求に関する確認を行います
9:30 介護事務業務
    メールチェック、前日の記録の確認と整理、レセプトソフトへの入力作業
    レセプト時期には介護報酬請求業務を行います
12:00 休憩
13:00 見守り
    介護スタッフが休憩の間、人手が不足するため食事介助や見守り、排泄の誘導などを行います
14:00 介護事務業務
    来客や家族対応、問い合わせへの対応や当月の介護保険更新者の確認、生活保護を受けている方の介護券、区役所への提出が必要な書類の手続き(介護用品支給申請書等)を行います
16:00 事務業務
    勤怠管理や在庫物品の確認や請求などを行います
18:00 退勤

レセプトで忙しい時期以外やトラブルがなくスムーズに業務ができた際は、残業なく帰宅できます。
それぞれの職場によって働き方や業務内容は異なりますが、幅広い業務を行うということの参考にしてください。



介護事務2

介護事務の活躍の場所は?

介護事務の活躍の場は、介護保険に関わる施設や事業所全般です。
それぞれの職場によって1日の流れや業務内容は大きく異なりますので、自分がどんな働き方をしたいか考え選びましょう。

・特別養護老人ホーム
・老人保健施設
・介護療養型医療施設
・グループホーム
・デイサービス
・訪問看護事業所
・訪問介護事業所
・居宅介護支援事業所
など
また、国民健康保険団体連合会、保険請求審査機関、損害保険会社、介護コンピューターシステム会社など、介護サービス事業所以外にも活躍の場が多岐に渡ります。

介護事務の配置基準はなく、職場により管理者や介護職、ケアマネージャーが兼務する場合があり、規模が大きい事業所では1~3名の介護事務が配置されているところもあります。

筆者のグループホームは小規模多機能ホームが併設されていますが、館全体の介護事務として1名配置されています。
介護事務の仕事だけでなく、介護人員が不足している際の見守りや排泄誘導、食事介助など介護現場の業務も行い、イベントにも他の介護職員と同様に参加します。

特別養護老人ホームなど規模が大きい施設では、介護事務専任として働くケースが多いですが、規模が小さい事業所や施設では兼任の場合もみられます。
そのため「デスクワークだけしたい」という人よりも、介護現場でのサポートにも柔軟に対応できる人材が採用されやすいでしょう。

介護事務の資格の取り方は?

介護事務の資格は複数あり、
「介護事務管理士 (JSMA技能認定振興協会)」
「ケアクラーク (日本医療教育財団)」
「介護報酬請求事務技能検定試験 (日本医療事務協会)」
など、
それぞれによって名称や開催団体が異なります。

受講条件はなく誰でも受験できるものがほとんどで、通信講座や通学講座などスクールでの受講となります。
いずれも国家資格ではなく民間資格となります。
どの資格を取得しても介護事務の知識やスキルをもっていることの証明となるので、介護事務への就職を目指している方は介護事務の受講と資格取得をおすすめします。

ケアマネージャーや介護職と介護事務を兼務されている方の多くは、独学でレセプトのやり方や請求業務等を身に着けています。
資格試験の難易度はそれほど難しいものではなく、テキストの内容をしっかり理解すれば合格できる内容となっています。

介護事務で働く場合に資格取得は必須ではなく、無資格・未経験OKの職場もあります。ですが、応募条件に資格保有が条件になっていることも多くみられます。
就職や転職で知識やスキルの証明としてアピールでき、採用に有利になるでしょう。

【介護事務におすすめの資格】
介護事務管理士 (JSMA技能認定振興協会) ケアクラーク (一般財団法人 日本医療教育財団) 介護報酬請求事務技能検定試験 (日本医療事務協会) 介護情報実務能力認定試験 介護事務実務士 (特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会)

介護事務に求められるスキルとは?

・介護保険制度や介護報酬算定の仕組みに関する知識
・パソコンスキル
・正確でスピーディーな業務
・コミュニケーションスキル

介護事務に求められるスキルは、主に介護保険制度や介護報酬算定の仕組みに関する知識で、見直しや改正があるので知識やスキルをアップデートしていかなければいけません。
介護報酬の請求は、経営の根幹に関わりますので正確でスピーディーに作業するスキルが求められます。

無資格・未経験OKの職場では、研修制度が充実しているところや業務として携わる中で知識を身につけていくところもあります。

また、介護事務は書類や資料作成等でパソコンを扱って仕事をすることが多く、レセプトは専用のソフトで行います。
そのためWordやExcel等基礎的なパソコンスキルは必須となります。

それ以外に職場の窓口として利用者や家族との関わり、他職種との連携も多いので、円滑な人間関係を構築できるコミュニケーションスキルも求められるスキルのひとつです。

介護事務の大変さとやりがいとは?

介護事務の方との関わりや筆者自身がレセプトを行っていた経験から、介護事務の大変さとやりがいをお伝えします。

大変さ

・向上心と対応力が必要
介護事務は介護保険や介護報酬請求の知識と、改正される制度に対応していかなければいけません。
日々新しい情報や介護保険の動向に目を向け知識を吸収することや、介護保険制度改正後のレセプトに対応することに大変さがあります。

・責任が大きい
介護報酬の請求は事業所の運営に関わる重要な業務です。
万が一間違った請求を行うと返戻によって入金されず、当月の収入がその分減ることになります。
間違った請求分は、月遅れで翌月に請求できますが入金が大幅に遅れてしまいます。
生年月日や利用日などの入力ミス1つでも返戻の対象となるため、毎月レセプトの時期の職場は緊張感が漂っています。

以前デイサービスで働いていた頃、何カ月も返戻が続いた頃がありました。
返戻の際はエラーコード(返戻の理由)も添えられているのですが、ケアマネージャーともお互いに相違がないことを確認して再請求してもやっぱり返戻。
なぜ?という焦りと上層部からのプレッシャーからつらいと感じたことがあります。
結局ケアマネージャー側が国保連へ伝送する際の記入項目不備だったのですが、どれだけ信頼関係があってもお互いに100%正確な仕事をしなければという責任を痛感しました。

POINT
介護報酬請求業務で忙しい月末月初は残業することも。
しんどいこともありますが、やり遂げたときの充実感はやりがいへつながるでしょう!



やりがい

・運営を支えるサポーター
プレッシャーもありますが、事業所の運営に役立っていることや事業所やスタッフを支える存在として達成感があります。
また、介護保険に関する専門的な知識を活かし、施設や事業所の経営面において欠かせない存在であるため責任感とやりがいをもって働くことができます。

・施設の顔として活躍
利用者や家族と接する機会が多く、制度の説明や日々のコミュニケーションで信頼関係を構築し、介護スタッフになかなか言えないことも話してくれることもあります。
利用者や家族からの感謝の言葉や笑顔をもらうと、介護職ならではのやりがいも感じることができるでしょう。

POINT
縁の下の力持ちとして経営を支えるやりがいがある!


介護事務の仕事に向いている人は?

介護事務は、以下のような人に向いています。

・事務職経験のある人
・PC操作や情報処理能力の高い人
・人とのコミュニケーションが好きな人
・介護業界で仕事がしたい人
・介護業務にも積極的に関われる人

介護事務は介護現場を直接見ることができますので、介護業務に自信はないけれど介護業界で働きたい方におすすめです。
介護職の働き方や利用者の過ごし方を知ることができ、介護保険に詳しくなるので家族介護や将来に活かすことができます。

また、レセプト期間(月末月初、10日頃まで)以外は基本的に定時で上がれることが多いので、家庭との両立を目指す方も働きやすい職種でしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
介護事務の仕事内容や資格の取り方についてお伝えしました。
一般の事務員よりもやることが多く大変な面もありますが、デスクワークだけでなく利用者とも関わりを持ちながら充実感がある仕事ができるでしょう。

高齢者人口の増加とともに介護施設や介護事業所が増え、介護事務のニーズは高まるため将来性のある資格としておすすめです。
介護事務専任としての求人は少なく、介護現場のサポートや介護職兼務での募集が多いのが現状です。介護業務に携わる内容や業務量についてしっかり確認しましょう。

また「デスクワークだけ」とこだわらず、介護業務に対して柔軟に対応できる方や介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)・介護福祉士といった介護資格所持者は採用に有利になりやすいです。
介護業界が未経験であっても「人との関わりが好き・人の役に立ちたい」という気持ちはプラス評価につながるので、関心のある方はぜひ講座受講を検討されてみてください。

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この記事の著者

吉田あい

大阪府出身 現役のケアマネージャー
専門は「高齢者介護論」「社会福祉援助技術論」
「介護現場におけるリスクマネジメント」

特別養護老人ホームや居宅介護支援事業所などの現場で、
介護職を10年以上経験。介護講師経験3年。
WEBライターとして、
介護・医療・転職・健康などのジャンルで執筆700本以上。

カイゴジョブアカデミーにて、介護の仕事や資格について、
実体験を踏まえたお役立ち情報をお伝えします。

【所持資格】
・介護支援専門員(ケアマネージャー)
・介護福祉士
・社会福祉士
・メンタル心理カウンセラー
など