35年間教員を勤め上げ、セカンドキャリアは介護の道へ。父の介護に備えながら新たなやりがいを感じる日々
初任者研修から踏み出した一歩
「みんなの介護転職ストーリー」、今回の主役は齋木智子さんです。35年間小学校の教員として勤務され、この度初任者研修を取得し共同生活援助(障がい者グループホーム)で介護の仕事に転職されました。教員時代の経験が介護の仕事にも役立っていること、また障がいの有無で区別することなく、人と接することそのものに楽しさとやりがいを感じているとお話くださいました。
2023年5月~6月 介護職員初任者研修(短期コース)/藤沢校
2023年8月 共同生活援助(障がい者グループホーム)に就職
記事の監修者:藤井寿和(介護福祉士)
定年退職前に母との突然の別れが
藤井:齋木さんは35年という長きに渡り小学校の教員としてご勤務されていたそうですね。
藤井:教員を目指したきっかけはなんでしょうか?
齋木さん: 小さい頃から働くなら学校の先生が良いと勧められてきたんですよね。自立できるからと。あと中学時代の友人が、あるとき「実は障がいがある弟がいるんだ」と打ち明けてくれて、そのあたりから障がいについて学ぶ機会もあり、興味を持つようになりました。普通の学校の先生になりたい人はたくさんいるけど、障がいがある人の学校はどうなんだろうと思ったんです。
藤井:2000年の介護保険施行も含め、昨今福祉に対する考え方が大きく変わってきていますが、教員時代にも変化はありましたか?
齋木さん: 教員になりたてだった35年前は、特別な場所、特別な雰囲気でした。社会の変化と共に障がいに対する理解や知識が広がり、今は特別ではない時代になっていると思います。障がい児学級を希望する親も増えてきていますね。
藤井:教員を勤め上げられて、セカンドキャリアに介護の仕事を選んだのはなぜですか?
齋木さん: 「もうすぐ定年だなー」なんて考えていたときに、早めに退職して何かしようかなと思っていたんです。数年前に小田原に引っ越してきたのですが、このあたりは高齢者が多くて介護施設もたくさんあるんですよね。それに親も高齢になってきましたし、介護関係の知識を身に着けておくのも良いかなと考えました。
藤井:実際に介護を仕事にしようと思ったのは?
齋木さん: 1年ほど前、長生きすると思っていた母が突然脳梗塞で亡くなりました。加齢とともに少しずつ弱っていくものと思っていましたが、急な出来事で。父も母より5歳上ですし、早期退職して介護を仕事にしよう、と動き始めました。
藤井:介護を仕事にしようと考えたとき、資格取得についてどのように考えましたか?
齋木さん: 実は、カイゴジョブアカデミーに出会う前に地元の大きな介護施設に直接電話して「働かせてください」と連絡したことがあるんです。その施設では、働きながら初任者研修の資格が取れるということだったので、「それはいいな」と思って。ただお話を聞いてみると研修は週1回でけっこう時間がかかりそうだったので、それであれば先にどこかで研修だけ受けて、それから改めて職場探しをしても良いかなと思ったんです。それでカイゴジョブアカデミーを見つけました。
介護の仕事は、今までの経験が活かせる
藤井:初任者研修を学んでみて、今までの経験が活かせそうと感じましたか?
齋木さん: 最初の授業で私がいままで経験してきたことが活かせるなと感じました。高齢者について学ぶ中で、障がい者についてのことも出てきましたので「ああ、通じるところがあるんだな」と。人への尊厳を大切にすることはすべての基本だと改めて思いました。
藤井:研修では介護技術の授業もありますが、実技の演習はいかがでしたか?
齋木さん: 一番難しかったです。私は身長が150センチないので身体介助が心配でした。教員時代にも身体介助はありましたが、相手は子どもで自分よりも大きい子はそういませんでしたので。ボディメカニクスも習いましたが簡単にできることではなく、1つ1つの技術がどうこうというよりは、身体の大きさの面で大変さを感じました。
藤井:就職先探しのポイントは?
齋木さん: まずは通勤時間ですね。父と2人暮らしで父のことがありますので、できれば30分以内、遠くても1時間の範囲でキャリアパートナーさんにお願いしました。あと夜勤はできませんが早朝勤務はできますとお伝えしていました。
藤井:条件に合う事業所はありましたか?
齋木さん: 看取りまで行っている介護施設など複数の介護施設をご紹介いただいて面接もしました。でも私の身体の小ささや介護経験が乏しいことなどからご縁がありませんでした。
藤井:いまの職場はご縁があったのですね。
齋木さん: いまの職場は面接も良い雰囲気で進みました。障がいをお持ちの方で自立されている方が多いので身体介助は少なく身体の大きさが選考に関係なかったんです。また私のこれまでの経験から、障がいや病気への理解ができていることは大きかったと思います。経験がない方だと障がいに対する驚きや否定的な気持ちが少なからず出てしまうこともあるので、これは大きかったんじゃないかなと思います。
藤井:教員時代と比較すると収入的に大きく減るのではないかと思いますが、その点はいかがですか?
齋木さん: 年収で考えたら大きな減収です。公務員でしたので給料などの保証もあり心配はありませんでしたが、自身も60歳近くになって「お金のために働く」というよりは、ゆとりをもった生活をしたいと。教員時代は残業も多く夜遅くまで仕事をすることもしょっちゅうでしたから。
藤井:今の職場での働きやすさなどはいかがですか?
齋木さん: 今は週3日勤務させていただいています。他の職員さんもいろんな働き方をされていて、シフトを作る方はとても大変だろうなと思います。どうしても職員の体調不良などでの欠勤も出ますし、土日は人が足りていないようです。
働き方が変わりストレスも減少
藤井:転職して良かったのはどんなことですか?
齋木さん: 将来の父の介護のイメージがつきやすくなったことでしょうか。今の職場の入居者は男性が多いのですが、働いている職員はほぼ女性です。初任者研修の実技では同性介助で女性同士のペアで学びましたが、現実は異性介助が多く、男性入居者への入浴介助や排泄介助なども多いです。異性介助をしながら父の介護をするならこういう感じかな、と具体的にイメージするようになりました。
藤井:転職によって生活に変化はありましたか?
齋木さん: 前の働き方とは大きく違い、勤務時間や通勤時間が減りましたのでストレスが減り心にゆとりができました。今の仕事もきっと毎日働くようになるとまた違うと思いますので、週3日くらいがちょうど良いと考えています。
藤井:お仕事以外の日はどんな風に過ごされているんですか?
齋木さん: 父の趣味である野菜づくりでできた野菜を料理したりして過ごしています。引っ越したのも野菜作りができる環境を求めてのことだったんです。父が作ってくれた野菜をどのように料理しようか、どのように保存ができるかなどを考えながら調理することが好きになりました。野菜作りが父の元気の源ですし、私の休みの日の楽しみでもあるんです。
藤井:同世代でセカンドキャリアに悩んでいる方に、介護の仕事はお勧めできますか?
齋木さん: その方がどのように思われるかだと思います。高齢者や介護が必要な人、障がいがあることを気にせず関わりを持てる、接することができる人にはお勧めできると思います。
藤井:障がい分野でのお仕事が長い齋木さんですが、やりがいはなんでしょうか?
齋木さん: 私にとっては、障がいの有無で区別はせず、人と接することに楽しさとやりがいを感じます。実はコミュニケーションがそう得意なほうではないのですが、人と接するのが好きなんでしょうね。
藤井:最後に、これからの目標や挑戦してみたいことについて教えてください。
齋木さん: 初任者研修修了後にすぐ実務者研修にも挑戦するつもりでしたが、今はまず一人ひとりの入居者の方々にしっかり接すことができるようになること、また日常の業務に慣れ、独り立ちできることが大切だと思っています。
インタビューを終えて
教員を退職され、セカンドキャリアとして介護に転身された齋木さん。働き方が大きく変わったことで心にゆとりが生まれストレスも減りました。また休日の過ごし方にも変化があり、それらがプラスに働いているのだと感じました。自分の状況や環境に合わせた職場に出会うため、キャリアパートナーの力を借りてみるのも良いですね。
構成、執筆:鈴木純子
「みんなの介護転職ストーリー」でご紹介している方々は、無資格・未経験から介護業界に挑戦したカイゴジョブアカデミーの卒業生です。皆さんが活用された「特待生キャンペーン」なら、自己負担なしで「介護職員初任者研修」の資格を取得でき、さらに介護職専門のキャリアアドバイザーによる就職先の紹介も受けられます。資格が1つあるだけで、給与や待遇がアップし、就職・転職時にも大変有利です。下記リンクからそれぞれ詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
>>自己負担なしで介護職員初任者研修を取得できる!「特待生キャンペーン」についてもっと見る
>>介護の最初の資格といえばコレ!「介護職員初任者研修」についてもっと見る
この記事の監修者
藤井寿和(ふじい ひさかず)
1978年 静岡県西伊豆生まれ。
18歳~24歳まで陸上自衛隊の救急隊員(衛生科)を経験し、
三宅島噴火に伴う災害派遣をきっかけに介護の仕事に転身。
医療法人で在宅医療に特化した介護を学び、介護施設の介護職員、生活相談員、管理者、事業部統括マネージャーに就任した後に、株式会社にて超都心型デイサービスの管理者を経験後、36歳で独立。
2015年に合同会社福祉クリエーションジャパンを設立。
介護福祉士現場コンサルタント、商品開発アドバイザー、講師業を経て、2017年、テレビ朝日の“スーパーJ チャンネル”にて自身への特集、密着取材が全国放映された経験から、介護業界の情報発信とスポットライトが当たる重要性に気づき、自主メディアの制作を志す。
介護専門誌のフリーペーパー発行人、編集長を歴任し、2021年9月にメディア事業へ注力する株式会社そーかいを設立し、代表取締役に就任、現在に至る。
・一般社団法人 日本アクティブコミュニティ協会 公認講師
・合同会社福祉クリエーションジャパン 代表
・株式会社そーかい 代表取締役
・ものがたりジャーナル 編集長
・NPO 16歳の仕事塾 社会人講師
・映画「ぬくもりの内側」プロモーションディレクター
齋木さん: はい、大学で養護学校の教員免許を取得し、養護学校の教員として働くつもりでした。ただ川崎市には当時小学部がある養護学校が1つしかなかったので、代わりに普通の小学校にもある障がい児学級の担任となることが多かったです。