10年に及ぶ裁判、家族のいさかいを乗り越え、第2の⼈⽣は介護⼠として⽣きるーアスペルガーを持つ⼦の親として、誰かの役に⽴てる存在になりたい
初任者研修から踏み出した一歩
「みんなの介護転職ストーリー」、今回の主役は安⽥昌弘さんです。「⼈⽣50年」と⾔われた時代もありましたが、今は「⼈⽣50歳から」と思える、安⽥さんの50歳での介護職への転職。モノ作りの家業などで営業職や職⼈を経験した後、直近10年を裁判に費やし、すべてが終わって再び新たなスタート地点に⽴ちました。こんなとき、⼈は何を指針に次の職業を選ぶのでしょうか。初任者研修を取得し⼦育ても終わり、フリーになった安⽥さんの胸中に去来したのは、「誰かの役に⽴ちたい」という思いでした。
2023年3月 ⼩規模多機能型居宅介護 就職
2023年4月~7月 初任者研修 ⽊曜コース/横浜校
記事の監修者:藤井寿和(介護福祉士)
10年に及ぶ裁判が終わったとき、誰かの役に⽴ちたいと思った
藤井:50歳、そして無資格、未経験で介護業界へ転職されたわけですが、ここに⾄るまでの経緯をお話していただけますか。
藤井:家族間の問題は、ときに他⼈よりもやっかいなことがありますよね。
安⽥さん: 仕⽅がないので他の⾦属加⼯の⼯場へ転職しました。2年間は営業をしましたが、職⼈さんがいなくなったので職⼈としても働きました。しかしその頃家業の経営についてもめて裁判をすることになり、そこも4年で辞めました。
藤井:裁判というのは?
安⽥さん: 兄はワンマン経営者で、⾃分に都合の悪い⼈にはパワハラまがいの⾏為で辞職に追い込んだりするような⼈でした。波⾵を⽴てたくはなかったのですが総会で役員就任決議をしても無視するので、経営権を巡って兄に対して裁判を起こしました。裁判が、そこから10年間も続いてしまったんですけどね。
藤井:その間、収⼊の確保という点についてはどうされていたのですか?
安⽥さん: 定職に就いてしまうと裁判の時間が取れなくなるので、就職はせず、貯⾦や妻の収⼊でなんとか暮らしていました。結果的に会社は解散することになってしまいましたが、⼀段落して次はどうしようかと考えていた時に、ふと介護が思い浮かんだんです。
藤井:突然介護が出てきましたが、これまでに介護との接点はあったのでしょうか?
安⽥さん: 友⼈に介護福祉⼠がいて、介護現場の話はよく聞いていました。「⼀⼈で数⼗⼈の利⽤者さんを担当している」とか、夜勤の話を聞いたりすると、「すげぇ⼤変なんだなぁ」とは思っていました。
藤井:「⼤変な仕事」と思いながらも、⼊ろうと思ったのはなぜだったのでしょう?
安⽥さん: 裁判中だった40代半ばごろから、「⼈のために何かできることはないか」という気持ちが芽⽣えていました。これまでは「加⼯精度」や「納期」なんかを考えるばかりの仕事で、全くそういうことを考えてこなかった⼈⽣でした。でも裁判や⼦育てをして⽇々を過ごすうちに、偽善と思われるかもしれませんが、「誰かのために」と思うようになっていたんですよね。私の⼦どもはアスペルガー症候群で、その関係でいろんな障がいを持つ⼈達を⾒てきていたのもあって、⾼齢者だけでなく、障がい者も含めて誰かの役に⽴てたらと思ってのことです。
⼩多機では「通所」「宿泊」「訪問」を経験できる
藤井:カイゴジョブアカデミーとは、どのようにして出会ったのですか?
安⽥さん: 普段インスタグラムとか⾒てると、介護系の広告がけっこう出てくるんですよね。それである時、「介護ってどんなどんな条件なんだろう?」とふと調べたときに、たまたま「カイゴジョブアカデミー」が出てきました。それでまずはどんな情報があるのか⾒てみたいなと思って登録したのがきっかけです。
藤井:キャリアアドバイザーとはどんな相談をされたんですか?
安⽥さん: キャリアアドバイザーさんから「未経験者でも必要としている職場はたくさんある」、さらに、「特待⽣キャンペーンを使えば資格を無料で取ることができる」と聞きました。まずは働くことを考えていたのですが、話を聞いて資格も取ることにしたんです。
藤井:職場を選ぶときにポイントにしたことは?
安⽥さん: ⺟が⾼齢なので、できるだけ家から近い職場がいいなと思ってました。それで紹介していただいたのが⼩多機(⼩規模多機能型居宅介護)です。⼩多機にはショートステイ、デイサービス、訪問看護などもあって、⼤変だけど⼀カ所でいろいろ経験できるのが魅⼒で、現在勤め始めて2ヶ⽉経過したところです。
藤井:資格を取る前に仕事を始められたわけですが、困ることはありませんでしたか?
安⽥さん: 排泄介助はけっこう⼾惑いました。オムツを替える時の体の動かし⽅がよくわからなくて、先輩に教えてもらって事なきを得ました。
藤井:排泄介助や移乗介助などは、事前に少し知っておくだけでもだいぶ違いますからね。講義を受けてからは、何か変わりましたか?
安⽥さん: 介護の⼤元となる倫理的な話は「深いな」と感じました。認知症に種類があることや、それぞれの認知症に対して対処法が違うことなども勉強になりました。例えば、レビー⼩体型は幻視という症状があり、それに驚いたり否定せず、ある程度話を合わせながら対応していくことなどは、現場で役⽴っています。
藤井:すでに夜勤もされているのですか?
安⽥さん: 週に4回ぐらい夜勤があります。⼊社して1週⽬から夜勤があって、慣れるまでは先輩も⼀緒に⼊ってくれて、教えてもらいながらでした。マニュアルがなかったので、施設⻑にマニュアル作成をお願いしたらすぐ作ってくれて、⼀⼈でも安⼼して夜勤に⼊っています。
藤井:⼊社1週⽬から夜勤があるとは、施設側も新⼊社員の受け⼊れ体制が整っているのですね。夜勤は具体的にどんなことをするのですか?
安⽥さん: ⾒回りや排泄介助や朝⾷作りなどがメインです。そういえば先⽇、⾃分と半⾝⿇痺の利⽤者さんともう⼀⼈の利⽤者さんのトイレのタイミングが全部重なってしまって、てんてこ舞いでした(笑)。まず待てる⼈には待っていてもらって、動いてしまう⼈から先にケアします。この場合は⽴ち歩きの⼈が⼀番危ないから先にトイレへ連れて⾏きましたが、こういう時の段取りも、⽇々を重ねるうちに少しずつ落ち着いてできるようになってきました。
藤井:男性はオムツ交換が苦⼿な⼈が多いですが、安⽥さんはどうですか?
安⽥さん: 私は最初から何とも感じなかったですね。汚れてたら気持ち悪いよね、徹底的にきれいにするからね! という思いのほうが強いですね。今はまだ⾃⽴して元気なのですが、先の親の介護のこともずっと気にかかってましたけど、介護職になってからは「いつでも来い!」という気持ちでどんと構えてますよ(笑)。
利⽤者とその家族も⽀える意義のある仕事
藤井:安⽥さんは裁判中お⼦さんの⾷事を作ることがよくあったそうですが、お料理が得意なんですよね? そういったことや前職のスキルなどは介護職で⽣かされていますか?
安⽥さん: 料理は好きで、若い頃に馴染みのフレンチレストランを少し⼿伝っていたこともあるんです。結構なんでも作れますよ。介護の仕事でも、例えば施設の⾷事はほとんどが湯せんするだけのものですが、スパゲッティなんかは普通に盛るだけじゃなくて、レストランで出るみたいにちょっと⾼く盛ってソースをちらしてみたりすると、皆さん喜んでくれますね。あとこれまでの仕事は営業職が多かったので、コミュニケーション⼒は役⽴っていると感じます。⾶び込み営業とかもよくしていましたし、初対⾯でもいくらでも世間話ができたりするのはこれまでで培ったスキルかもしれませんね。
藤井:介護の仕事に就いて、ご家族の反応はいかがですか?
安⽥さん: 実は娘が喜んでいるんですよ。よく、「今⽇はどうだった? どんなことがあった?」なんて聞いてくれます。認知症の違いを教えてあげたりして、親⼦間で介護の話をすることが増えましたね。
藤井:安⽥さんと同年代の⽅に向けて、介護職のおすすめポイントがあればお願いします。
安⽥さん: 介護の仕事は、⼤変だけどやりがいがあります。それにほぼほぼ感謝しかされません。利⽤者さんからもご家族からも「ありがとう」という⾔葉しかもらっていません。嬉しいけど、感謝しかされない介護の仕事は特殊な感じすらします。働いてみて、介護の仕事に携わっている⼈も素晴らしいけど、介護という仕事⾃体、奥が深く、「社会に役⽴っている」という実感があります。預かっている利⽤者さんだけでなく、間接的にそのご家族の⽣活も⽀えているので、この仕事は意義がある、いい仕事だと思います。
藤井:良い点だけでなく、不安になる点があれば教えてください。
安⽥さん: 施設によるとは思いますが、⾼収⼊を期待する⼈や、家族サービスのために⼟⽇に絶対休みたい⼈も難しいかもしれませんね。ぼくの場合、娘が⼤学⽣、息⼦が⼤学院⽣になって、⼦育てが⼀段落したので挑戦できました。あとは体⼒⾯ですね。あと7〜8年は⼤丈夫だと思いますが、⾃分が60歳になったときにどこまで体⼒を保てるかどうかはまだわかりません。また筋トレしようかなと思います。働き始めてから体重が4キロ落ちて、⾝体の筋⼒も戻ってきましたよ!
藤井:これから挑戦したいことはありますか?
安⽥さん: まずは今通っている初任者研修を無事に取って、その後に実務者研修を取得して、介護福祉⼠まで取りたいですね。いまは⾼齢者の介護ですけど、障がい者の介護にも興味があります。障がいのある⼦どもたちも⾒てきましたが、みんなピュアでいい⼦なんです。将来的にはそういう⼦たちの⼿助けができたらいいなと思いますね。
インタビューを終えて
10年間も「裁判中」で就職できなかった安⽥さんは、「裁判が終わったら何をしよう」とずっと考えてこられたと思います。「第2の⼈⽣」は純粋に「今後の⼈⽣でやりたかったこと」として介護を選ばれました。そして、そのときに出会ったカイゴジョブアカデミーのキャリアアドバイザーの話で、「資格を取る」という新たな⽬標、ステップアップの道を⾒つけることができました。50歳以降も資格取得によって、「まだ⾃分にできることがある!」と挑戦し続けることができるのが介護業界の魅⼒だと思います。
構成、執筆:谷口のりこ
「みんなの介護転職ストーリー」でご紹介している方々は、無資格・未経験から介護業界に挑戦したカイゴジョブアカデミーの卒業生です。皆さんが活用された「特待生キャンペーン」なら、自己負担なしで「介護職員初任者研修」の資格を取得でき、さらに介護職専門のキャリアアドバイザーによる就職先の紹介も受けられます。資格が1つあるだけで、給与や待遇がアップし、就職・転職時にも大変有利です。下記リンクからそれぞれ詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
>>自己負担なしで介護職員初任者研修を取得できる!「特待生キャンペーン」についてもっと見る
>>介護の最初の資格といえばコレ!「介護職員初任者研修」についてもっと見る
この記事の監修者
藤井寿和(ふじい ひさかず)
1978年 静岡県西伊豆生まれ。
18歳~24歳まで陸上自衛隊の救急隊員(衛生科)を経験し、
三宅島噴火に伴う災害派遣をきっかけに介護の仕事に転身。
医療法人で在宅医療に特化した介護を学び、介護施設の介護職員、生活相談員、管理者、事業部統括マネージャーに就任した後に、株式会社にて超都心型デイサービスの管理者を経験後、36歳で独立。
2015年に合同会社福祉クリエーションジャパンを設立。
介護福祉士現場コンサルタント、商品開発アドバイザー、講師業を経て、2017年、テレビ朝日の“スーパーJ チャンネル”にて自身への特集、密着取材が全国放映された経験から、介護業界の情報発信とスポットライトが当たる重要性に気づき、自主メディアの制作を志す。
介護専門誌のフリーペーパー発行人、編集長を歴任し、2021年9月にメディア事業へ注力する株式会社そーかいを設立し、代表取締役に就任、現在に至る。
・一般社団法人 日本アクティブコミュニティ協会 公認講師
・合同会社福祉クリエーションジャパン 代表
・株式会社そーかい 代表取締役
・ものがたりジャーナル 編集長
・NPO 16歳の仕事塾 社会人講師
・映画「ぬくもりの内側」プロモーションディレクター
安⽥さん: 家業の⼯場で営業やレーザーのオペレーターなどをしておりました。ところが、他所で働けない⻑男が会社に⼊り込んできて折り合いが悪く、会社を辞めたんです。癌を発病した⽗に頼まれ会社に出戻ったものの、兄とは関わらないように、外回りとか出張などに⾏っていました。しかし⽗が他界すると兄が⺟に対し会社の相続を放棄しろと⾔い出し、⾒兼ねて私が家裁に調停の申⽴てをしたら1週間後には兄に解雇されました。