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「訪問介護は一人ひとりと向き合い、心を通わせる仕事」9-15時勤務、半年でサ責になったワーキングマザーの決断と変化

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初任者研修から踏み出した一歩

「みんなの介護転職ストーリー」、今回の主役は市瀬尚子さんです。小さい頃から大好きだったインテリアの世界で、図面を描くなどの専門職を約20年間してきました。在宅ワークで主婦として家庭を守りながら、子育てにも専心してきた市瀬さんが直面したのが息子さんの不登校。今回の転職は、昔から気になっていた介護業界へのデビューだけでなく、家庭内の行き詰った状況も打開しました。初任者研修で学び転職を決めた訪問介護が、実は自由度が高く主婦のパートにも向いている点にも注目です。

市瀬 尚子さん(44歳)

2022年夏 初任者研修 短期コース(新宿校)
2022年10月 訪問介護事業所 就職

記事の監修者:藤井寿和(介護福祉士)

息子の不登校に悩み、親子で「外の世界」へ

藤井:インテリア業界で20年も仕事をされていたのですね。

市瀬さん: 小さい頃から家の見取り図やマンションのチラシ、住宅の雑誌などを見て、素敵なインテリアのイメージをわかせるのが大好きでした。短大のインテリアコース卒業後、さらに実務的な技術を学ぶために専門学校に進み、パソコンで図面を描く技術などを習得しました。その後は主にオフィス設計の仕事に関わり、内装デザインのパース作成*などを手掛けていました。正社員や派遣など勤務形態を変えながら、直近6年間は独立して個人事業主として働いていました。

*建物の室内や外観を立体的に表現すること

 
初任者研修を受講した仲間とのバーベキューの様子

藤井:20年間インテリアの仕事をしてきて、介護に転職しようと思ったのはどんなきっかけからだったのでしょう?

市瀬さん: 中学1年生と中学3年生になる息子がいるのですが、上の子がコロナになる少し前に不登校になったんです。私なりに、何とか外の世界とのつながりを教えたかったのですが、私自身も自宅でPCに向かって仕事をすることが多く、人と話すことはほぼない生活で……。大好きな仕事だし、技術職にも誇りをもっていましたが、ふと、「息子はずっと家にいる私を見てどう感じているのだろう」と思いました。

藤井:お子さんの不登校は、お母さんにとっては自分のことよりつらいですね。

市瀬さん: それで、まず私が変わらなくてはいけないと思うようになりました。コロナ禍でインテリア業界自体が落ち込み、仕事も減って時間ができたので、息子と一緒に何か勉強できることがないか考えてみました。せっかく勉強するなら、今から始めて、この先ずっとできる仕事につながるものがいいと思って。それが介護でした。

藤井:そこで介護が出てきたんですね!

市瀬さん: 同居していた祖父がヘルパーさんのお世話になることもあって、介護自体はその頃から存在を身近に感じていました。私の母もヘルパー2級を取得していましたし、私も「福祉住環境コーディネーター」という資格を取得していたので、介護業界に触れる機会はありました。なので介護という仕事は実はずっと興味があったものの、息子のこともあり、なかなか行動に移すまでには至っていませんでした。

藤井:では、行動に移せたのはどんなきっかけからだったのでしょう?

市瀬さん: まずは資格だけでも…と思い、 2022年の夏にカイゴジョブアカデミーに申し込みました。初任者研修の勉強が始まったあたりから、息子が寮のあるフリースクールに興味を持ち始めたんです。息子の存在は私にとってかなり大きくて、私が変わらなければ目の前の現実は変わらない、と思っていたことが現実になった瞬間でした。息子の「その学校に行ってみようかな」という言葉を聞けたとき、「だったら、私も私なりに頑張ろう!」と介護職で働くことを決心しました。

試験前日に仲間とカラオケ店で試験対策を

藤井:カイゴジョブアカデミーの授業はいかがでしたか?

市瀬さん: バラエティ豊かな講師が多くて、とても刺激になりました。その日ごとの課題に精通した講師を用意してくださっている学校側の配慮が感じられました。具体的な事例をたくさん話してくださって、実際に就労したときのイメージをもちやすかったですね。とくに、亡くなる場面に立ち会う経験はたくさんあるわけではないので、そういう経験も多い講師の方々のエピソードは、とても参考になりました。


藤井:受講中の思い出に残っているエピソードはありますか?

市瀬さん: 3か月の短期コースだったので、クラスメートとはとっても仲良くなれました。よく「クラスメートと仲良くなった」という受講者の感想がありますよね?「あれって本当かな」なんて思っていましたが、本当でした!(笑)とくに思い出に残っているのは、試験前日のこと。いよいよ試験ということでとても緊張していた仲良し4人が、「だったら、どこかで実技テストの練習しない?」ということになり、カラオケ店で実技のロールプレイを練習しました。授業で作成した介助の手順書を読むナレーター役、介助者役、利用者役を順番に演じました。それを録画したので、「仲の良い人にも渡せるといいね」となり、その動画をYouTubeの限定公開でアップする方法を思いつきました。自分たちも寝る前にそれを見て復習できました。楽しかった思い出です。

 
練習の様子

藤井:練習するだけでなくYouTubeを活用してだれでも復習できるようにするとはすごいですね! 学生時代の授業と比べると、どうでしたか?

市瀬さん: 教科書に沿った問題を覚えて、それをテストするのが学生時代だとしたら、初任者研修の授業は仕事に直結する内容だと思います。介護は人の体に触れる仕事だけど、自分は家族以外の体にしっかりと触れたことがない、でも触れなければならない……。命を預かる仕事を覚える授業なので、真剣味が違います。

藤井:就職先は「訪問介護」ですね。介護職未経験の方はなかなか選ばないサービス形態ですが、どんな理由からですか?

市瀬さん: 私はこれまで個人事業主として仕事をしてきていましたので、自分のペースを保てる職場がいいと思ったんです。大きな施設ですとなかなかそれは難しいのではないかと……。

藤井:大きな施設では自分のペースは保てないというのは?

市瀬さん: 私は公の時間とプライベートな時間のオンオフが付きにくいタイプなんです。そんな私が施設という「ずっと働けてしまう環境」だと、ヘトヘトになるまで働いてしまう危険性があります。訪問介護は利用者さんの家から家への移動は一人ですし、訪問先を一歩離れればオフになり、切り替えがはっきりできますよね。それと、訪問介護は小さなコミュニティの中で小回りがきいて、パートだったらある程度の自由度も確保できると思いました。

藤井:訪問介護以外のサービス形態については、比較できる知識があったのですか?

市瀬さん: 私の親戚に介護職をやっている人が何人かいて、介護老人保健施設の話、病院看護師の話、介護福祉士の話など兼ねてからいろいろ聞いていました。その話のなかで、「夜勤がある」「休みが取れない」「ルールが厳しい」という話を聞いていて、下の子もいますし私は夜勤はできないので、夜勤のない訪問介護を選びました。

藤井:訪問介護は研修期間があっても、やがては独り立ちして一人で行動することになり、その場でヘルプが出せないので、未経験者には難易度が高いというイメージがあります。実際に働かれてみて、その点はどうでしたか?

市瀬さん: 私の就労先は、私が未経験であることをわかった上で採用しているので、担当する利用者さんもあまり難易度の高い方はいませんでした。まずは掃除や洗濯、料理などの「生活援助」の方が中心で、排泄介助や入浴介助といった「身体介助」も見守りレベルの方ばかりで、特に不安はありませんでした。あと、うちの事業所はありがたいことに先輩ヘルパーが訪問についてきてくれる「同行訪問」の回数制限がないので、「不安だったら是非言ってください」と、私が自信をもてるようになるまで同行してくれました。それを重ねるうち、だんだんハードルがなくなっていった感じです。

藤井:なるほど。たとえ未経験の方でも、そうした環境が整っていれば決して難易度が高いというものではないのですね。就職先を決めるとき、カイゴジョブアカデミーのキャリアアドバイザーとはどんな相談をされましたか?

市瀬さん: 私を担当してくれたキャリアアドバイザーさんは、いつも的確なアドバイスと迅速な対応をしてくれて、とても頼りにしていました。私は当初、正社員で近所がいい、という条件で就業先を探してもらっていたのですが、途中で家庭の事情でパートに条件変更したんです。そんなわがままにも関わらず、条件に合う就業先をたくさん持ってきてくれました。もし一人で探していたら、すごい数の求人情報の中から「私に合う職場はどれだろう?」と悩んだでしょうし、「もっと良い求人がほかにもあるかもしれない」と考えて、いつまでも決められなかったと思うんです。介護業界で働くことの実情や、いろいろな情報を持っているキャリアアドバイザーさんだからこそ、「市瀬さんの条件だとココとココがオススメです!」と提案してもらうと、「じゃあ、この中から決めよう!」と納得できました。

利用者さんの笑顔を独り占めできる訪問介護

藤井:訪問介護をパートでする場合、具体的にはどんなタイムスケジュールで動くのですか? 介護度の低い利用者さんのお宅ではどんなことをしますか?

市瀬さん: 私は9時〜15時までの時間帯で働いています。ある日のスケジュールを例にしてみると、朝、独居の利用者さんのお宅に行ってデイサービスへの送り出しをします。この場合は着替えなどの支度の手伝い、火の始末、戸締まりまでをして、車に乗せるまでが業務です。その後一旦事業所に寄って、必要な書類を書いたり職場内での情報共有などをして、また2件訪問、そして午後にも1件訪問して、自宅に直帰するというイメージですね。訪問介護は「自分の空き時間だけ働く」という自由な働き方もできるところが、育児もある私のような世代にはとても合っていると思います。

 
1日のスケジュール

藤井:確かに、訪問介護は主婦の方にも向いていそうですね。

市瀬さん: 主婦の方にも向いていると思いますよ。とくに子育て経験のある方なら、オムツ交換も慣れているので、下のお世話にも抵抗が少ないと思います。こちらの言うことを聞いてくれない子どもに付き合ってきたので忍耐力がある方も多いし、見守りや傾聴なんかも得意なんじゃないでしょうか。子育てだけでなく、“人育て”をしてきた管理職の方も向いているかもしれませんね。それに運動不足で体を動かしたい人も! 訪問介護は自転車移動で健康的になれますよ。あとは、事業所の近くに住まわれているパートの方々は、空き時間があれば自宅へ帰って家事や休憩をしている方もいらっしゃるので、時間を有効活用したい方にもおすすめできます。

生活の流れ
生活の流れ

藤井:2022年の10月から介護職としてスタートして半年が経過したところですが、前職と比べていかがですか?

市瀬さん: 今は、仲間がいます。個人事業主のときは、悩んだり、誰かに助けてもらいたくても全部一人で解決しなくてはいけなかったけど、今の職場には相談できる上司と心強い先輩がいます。支えてくれる人がたくさんできて、あの時、決意して一歩踏み出してよかった、こんな恵まれた世界が待ってくれていたんだと思っています。

藤井:前職の経験が活かせていると感じる場面はありますか?

市瀬さん: 訪問介護はヘルパーと利用者さんが1対1ですが、前職も私とデザイナーさんの1対1でした。私の仕事はパース画像を提供することでしたが、いつも目の前には見えないエンドユーザーがいて、その方のニーズを想像してデザイナーさんとすり合わせをしながら仕事に取り組んでいました。いまの仕事も、一人の利用者さんのニーズを想像してサービスを提供しているので、前職との共通点を感じています。なかには難しい利用者さんもいますけど、「この人のために何ができるだろう」と考えながら通ううち、ようやく心が通じて「いつもありがとうね」なんて言われると、心の底から嬉しくてたまりませんよ。

藤井:今回介護職に転職した理由に、不登校の息子さんとの関係がありましたが、現在、変化はありましたか?

市瀬さん: はい、変わりました。でも、変わったのは息子より私だったんです。息子ばかりに注目しなくなりました。見なくてもいいことは見なくなったし、聞かなくていいようなことは、聞かなくなりました。介護の世界で、人の人生が幕を閉じたことを知るたび、「いろいろな経験があって、人は成長して、終わっていくのだな」と思えるんです。人の命はいつ尽きるかわかりません。ここ数年のいら立ちや親子間の歪みができたとしても、自分がいい思い出にできたらいいな、と思えてきたんです。上の子は寮に入って新たな一歩を踏み出し始めていますし次男には「今日、お仕事先で、こういうことがあったのよ」なんて話をすると、「いいねえ、仕事楽しそうで(笑)」って言われて「あ、私、楽しく仕事をしているように見えるんだ」って嬉しくなりました。

藤井:市瀬さんが訪問介護の現場でイキイキと働いている様子が目に浮かびます。

市瀬さん: 「未経験でよく訪問介護を選んだね」とみなさんに言われます。先ほどお話に出たように、難易度が高いイメージがあるのでしょうね。でも、一人ひとりと30分や1時間、直接お話やケアができるので、利用者さんとじっくり向き合いたい、心を通わせるケアをしたい、という人は絶対に訪問介護が向いています。訪問介護はクセになると思いますよ。だって、みなさんの笑顔を独り占めできますから!

藤井:最後に、これからチャレンジしたいことを教えてください。

市瀬さん: 今はパートで、まだ半年しか働いていませんが、個人事業主でやってきた経験が買われたのか、先日「サービス提供責任者」になりました。今年の2月には実務者研修も取得しました。まだ経験が浅く、ついケアばかりに目がいって利用者さんが困っていることに目が行き届いていない、と自分でもわかっています。そういった意味では、今後さらに経験を積んでいって、利用者さんをしっかり受け止められる自分になりたいと思っています。

インタビューを終えて

訪問介護は「一人だから難易度が高い」というイメージがあるかもしれませんが、それも環境次第。生活援助だけ、という利用者さんもたくさんいますし、実は「一人だから小回りがきき、自由度が高い働き方ができる」というメリットもあることが市瀬さんのお話でわかりました。転職活動についても信頼できるカイゴジョブアカデミーのキャリアアドバイザーが厳選してくれた求人情報なら、「この人が選んでくれたなら、それ以上の情報はないんだ」と迷うことなく決められるというお話には説得力がありました。

構成、執筆:谷口のりこ


「みんなの介護転職ストーリー」でご紹介している方々は、無資格・未経験から介護業界に挑戦したカイゴジョブアカデミーの卒業生です。皆さんが活用された「特待生キャンペーン」なら、自己負担なしで「介護職員初任者研修」の資格を取得でき、さらに介護職専門のキャリアアドバイザーによる就職先の紹介も受けられます。資格が1つあるだけで、給与や待遇がアップし、就職・転職時にも大変有利です。下記リンクからそれぞれ詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。

>>自己負担なしで介護職員初任者研修を取得できる!「特待生キャンペーン」についてもっと見る

>>介護の最初の資格といえばコレ!「介護職員初任者研修」についてもっと見る

この記事の監修者

藤井寿和


1978年 静岡県西伊豆生まれ。
18歳~24歳まで陸上自衛隊の救急隊員(衛生科)を経験し、 三宅島噴火に伴う災害派遣をきっかけに介護の仕事に転身。
医療法人で在宅医療に特化した介護を学び、介護施設の介護職員、生活相談員、管理者、事業部統括マネージャーに就任した後に、株式会社にて超都心型デイサービスの管理者を経験後、36歳で独立。
2015年に合同会社福祉クリエーションジャパンを設立。
介護福祉士現場コンサルタント、商品開発アドバイザー、講師業を経て、2017年、テレビ朝日の“スーパーJ チャンネル”にて自身への特集、密着取材が全国放映された経験から、介護業界の情報発信とスポットライトが当たる重要性に気づき、自主メディアの制作を志す。
介護専門誌のフリーペーパー発行人、編集長を歴任し、2021年9月にメディア事業へ注力する株式会社そーかいを設立し、代表取締役に就任、現在に至る。

・一般社団法人 日本アクティブコミュニティ協会 公認講師
・合同会社福祉クリエーションジャパン 代表
・株式会社そーかい 代表取締役
・ものがたりジャーナル 編集長
・NPO 16歳の仕事塾 社会人講師
・映画「ぬくもりの内側」プロモーションディレクター

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