「向いてるよ」─友人の言葉がきっかけで製造業から介護の道へ踏み出した20代女性の決心
初任者研修から踏み出した一歩
「みんなの介護転職ストーリー」、今回の主役は進藤みづきさんです。進藤さんは、高校卒業時には「自分のやりたいこと」はまだ見つからず、母親の勤務先である靴の製造工場に就職しました。その後、介護職の友人に「向いている」と言われたのがきっかけで、初任者研修の受講を決意、介護の世界に入ることになりました。とくに認知症に興味をもち、どんな症状の人も「個性」と受け止められるのは、「人に興味がある」「人が好き」という進藤さんの人柄ならではかもしれません。
2021年11月~2022年2月 介護職員初任者研修/姫路校
2022年2月 急性期病院の介護助手 就職
記事の監修者:藤井寿和(介護福祉士)
就職から半年後に見えてきた「やりたいこと」
藤井:卒業後、靴の製造工場に就職されたのですよね。元々製造業に興味があったのでしょうか?
藤井:その「いつか」が1年前に訪れたわけですね。介護に転職しようと思ったきっかけは何でしたか?
進藤さん:同級生が介護職をしていて、現場で高齢者の方とおしゃべりをしたり、一緒に遊んだりする様子を聞いて、「楽しそうだなぁ」と感じました。友達にも「向いているよ」と言われ、心が動いたのです。
藤井:「向いているよ」と言われたのは、進藤さんのどんなところを指して言ったのでしょう?
進藤さん:きっと、人の世話をするのが好きなところです。困っている人を見ると放っておけないんです。
藤井:例えば、どんなことでしょう?
進藤さん:高校時代は宿題を忘れた人にノートを見せてあげるとか。街で困っている人を見かけたら、思わず駆け寄ってしまうとか。電車通学でしたが、車椅子の人が電車に乗るのを苦労しているのを見ると、急いで走って行って手伝ってあげていました。こういうところはきっと母親似だと思います。
藤井:なるほど、お世話好きというより、困っている人がいたら放っておけない優しい方なんですね。保育なども似た業界ではありますが、今回介護業界を選んだのは、どんな理由からですか?
進藤さん:保育士と迷った時期もありましたけど、母に相談したら「あなたはおじいちゃんやおばあちゃんが好きだから、保育士よりも介護士のほうがいいんじゃない?」と言われました。それでどんどん介護のほうに興味をもって、いろいろ調べるようになりました。
藤井:介護職への転職を決めてから、学校と就職どちらを先に考えましたか? 介護職のお友達に勧められた場合、そのままお友達の勤務先などに就職されるケースもよく聞きます。
進藤さん:何もわからないのに、介護に関わるのはちょっと違うと思っていました。なので、ちゃんと勉強して初任者研修を取ってから就職するつもりでした。
藤井:学校はどのように探しましたか?
進藤さん:インターネットで介護を学べる学校を検索しました。自分の家から一番近く、駅近で通いやすいという点がカイゴジョブアカデミーに決めた理由です。そのときにカイゴジョブの担当者とも相談して、最終的には今の職場に通いながら、初任者研修を受講することになりました。おじいちゃん、おばあちゃんが好き過ぎて、「早く職場で関わりたい!」という気持ちが大きかったからです。
認知症ケアに関われる職場で働きたい!
藤井:授業で印象に残っていることはありますか?
進藤さん:これまでの生活で介護を必要とする人と接する機会はなかったので、自分が知らない世界のことばかりでした。「とろみの付け方」や「杖を持っている患者さんと歩幅をどう合わせるか」は特に勉強になりましたね。同期の仲間と休憩時間に一緒に復習や、授業以外の交流も思い出に残っています。
藤井:就職先はどんなことをポイントに選びましたか?
進藤さん:認知症の人のことを知りたかったので、認知症の人がたくさんいるところで働きたいと思っていました。
藤井:それは珍しい希望かもしれませんね。認知症の人が多いと、「大変そう」と思う人も多いと思いますけど、なぜ認知症に興味をもたれたのですか?
進藤さん:認知症には、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、いろいろなタイプと特徴があります。認知症発症以前の性格のままの人もいれば、性格がまるっきり変わってしまう人もいます。優しい人もいれば、怒鳴りつけてくる人もいます。同じ症状ではなく、一人一人違うとわかってきて、どんどん興味を持ちました。
藤井:なるほど。進藤さんは「人に興味がある」のですね。それで、どんなサービス形態の施設に就職されたのですか?
進藤さん:急性期病院の介護助手です。見学してから決めたかったので、紹介してもらった今の病院に行ってみたら、車椅子の人が多く、いろいろな認知症の人がいて、「個性豊か」に感じたのでそこに決めました。
藤井:今後、急性期病院で認知症の高齢者をケアする割合もますます増えてくるでしょうね。認知症のために自分の症状をうまく伝えられず、スタッフのほうも認知症に慣れてなくて対処に困るケースもあると聞きます。そんななかで、進藤さんのように認知症に理解がある人に、介護助手としてどんどん活躍してほしいですね。
何を言われても落ち込まず、「日々勉強」と思える
藤井:日勤のお仕事はどんな流れですか?
進藤さん:朝のオムツ交換から始まって、お茶を入れてコップを渡す、昼食の準備をして食事介助をする、おやつタイムの準備をして介助、またオムツ交換に回って、最後は人数チェックをして終わる。だいたいこんな流れです。いま授業で学んで一番役立っているのは、寝たきりの人のシーツ交換です。
藤井:夜勤もなさっているのですね。夜勤は大変ではないですか?
進藤さん:私はもともと睡眠時間が少ないタイプなので、わりと平気なんです。それに、思ったよりもしっかり寝てくれる人が多かったので、日勤とさほど変わりませんでした。ただ、夜になると不穏(警戒心が強く、落ち着きがなく興奮している状態などを指す)になる患者さんが増えてきて、怒鳴りつけられることもあって、けっこう堪えました。でも、時間が経てば穏やかになるので、少し様子を見るなどして対処しています。
藤井:実際に介護現場で1年働いてみて、前職と比べてどうですか?
進藤さん:製造業と比べて、いろいろな人と関われるので、日々新しい発見があります。介護職に転職して本当に良かったと思っています。オムツ交換の時には「いつもありがとう」と言われるし、何をしても感謝されるので、お世話する甲斐があります。「孫に似ている」と言われることも多いです。
藤井:逆につらいこともありますか?
進藤さん:急性期の患者さんは感情がコロコロ変わる方が多いので、傷つくようなことを言われることもあります。でも、そういう人と関わること自体が良い経験になるので、落ち込まず、「日々勉強」と思うようにしています。私はもともと怒ることがあまりないし、人の言動を悪いようには取らないので、認知症の人のお世話は苦になりません。
藤井:今後の目標を教えてください!
進藤さん:認知症の人のことをもっと勉強したいですね。認知症介助士、認知症ケア専門士など認知症の資格もいろいろあるので、取得していきたいです。最終的にはケアマネジャーになるのが目標です。
インタビューを終えて
今回のインタビューで度々出ていた「認知症」というキーワード。認知症でどんな人格が現れても「もっと知りたい」と受け止められる進藤さんは、人に対してポジティブな方でした。高校卒業の時点で「やりたいこと」が見つかっていないのは自然なこと。そんなときに「興味の芽」を見つけたら、専門のスクールにアプローチして相談に乗ってもらったり、クラスメートという存在を得られると、進むべき道が大きく拓かれていきます。考えているだけでなく、動いてみることが大切ですね。
構成、執筆:谷口のりこ
「みんなの介護転職ストーリー」でご紹介している方々は、無資格・未経験から介護業界に挑戦したカイゴジョブアカデミーの卒業生です。皆さんが活用された「特待生キャンペーン」なら、自己負担なしで「介護職員初任者研修」の資格を取得でき、さらに介護職専門のキャリアアドバイザーによる就職先の紹介も受けられます。資格が1つあるだけで、給与や待遇がアップし、就職・転職時にも大変有利です。下記リンクからそれぞれ詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
>>自己負担なしで介護職員初任者研修を取得できる!「特待生キャンペーン」についてもっと見る
>>介護の最初の資格といえばコレ!「介護職員初任者研修」についてもっと見る
この記事の監修者
藤井寿和(ふじい ひさかず)
1978年 静岡県西伊豆生まれ。
18歳~24歳まで陸上自衛隊の救急隊員(衛生科)を経験し、
三宅島噴火に伴う災害派遣をきっかけに介護の仕事に転身。
医療法人で在宅医療に特化した介護を学び、介護施設の介護職員、生活相談員、管理者、事業部統括マネージャーに就任した後に、株式会社にて超都心型デイサービスの管理者を経験後、36歳で独立。
2015年に合同会社福祉クリエーションジャパンを設立。
介護福祉士現場コンサルタント、商品開発アドバイザー、講師業を経て、2017年、テレビ朝日の“スーパーJ チャンネル”にて自身への特集、密着取材が全国放映された経験から、介護業界の情報発信とスポットライトが当たる重要性に気づき、自主メディアの制作を志す。
介護専門誌のフリーペーパー発行人、編集長を歴任し、2021年9月にメディア事業へ注力する株式会社そーかいを設立し、代表取締役に就任、現在に至る。
・一般社団法人 日本アクティブコミュニティ協会 公認講師
・合同会社福祉クリエーションジャパン 代表
・株式会社そーかい 代表取締役
・ものがたりジャーナル 編集長
・NPO 16歳の仕事塾 社会人講師
・映画「ぬくもりの内側」プロモーションディレクター
進藤さん:特に興味があったわけではなく、他にやりたいと思うことがみつかっていなかったので、母親の勤めていた靴の製造工場に就職しました。革の型取りや仕上げをしていましたが、正直、「いつかやりたいことが見つかったら転職する」と決めていました。