「人のためになる仕事」を求めて介護業界へ。IT企業を早期退職後、介護職を選んだ50代男性のセカンドキャリア論
初任者研修・実務者研修と続けて取得し、さらなるスキルアップへ!
「みんなの介護転職ストーリー」、今回の主役は澤田治夫さんです。澤田さんは、有料老人ホームで3年目となる介護職の男性です。大学卒業後にコンピュータ専門学校でプログラミングを習得して、コピー機を販売する総合商社~外資系IT企業で25年間勤務した経歴をもっています。コロナで会社が早期退職を募った際、新しいステージを目指して介護の世界に一歩を踏み出しました。初任者研修、実務者研修を取得しようと思ったきっかけ、介護を選んだ理由や転職活動の方法、そして介護職になって感じたことなどを伺いました。
2020年7月~2020年10月:介護職員初任者研修修了/横浜校
2020年12月:介護福祉士実務者研修修了
2020年6月:有料老人ホームへ就職
記事の監修者:藤井寿和(介護福祉士)
経験したことがない仕事にチャレンジしたい!
藤井:早期退職をされたときに、最初から介護業界を考えていたのですか?
藤井:ということは「お金のための転職」という要素は少ないのですね。どうして介護の世界に興味をもたれたのですか?
澤田さん:FPを取得した時に、「自分が払っている介護保険料はどう使われるのだろう?」とそのお金の流れが気になって、介護の世界に興味をもつようになりました。介護は全く未知の業界なので、まだやったことがない仕事にチャレンジして、自分を試してみたいという気持ちも大きかったですね。失敗したとしてもリカバリーの方法を学べばいいと思っていました。
藤井:セカンドキャリアだからこそ、これまでに経験したことがない仕事をやろうということですね。
澤田さん:それと、手塚治虫さんの『火の鳥』が好きで “輪廻転生” という考え方にも影響されています。つまり、自分のやったことが自分に返ってくるということですね。これまでの人生は仕事に追われていて、人の手助けになるようなことはしてこなかったので、「人のためになる仕事」ということをずっと考えていました。老後の充実感や心の豊かさはお金で買えないことにある。それは「人と人」。人と人の関わりの中で新しい気付きや信頼関係が構築されていくのは介護の世界かなと思いました。
藤井:介護の仕事に対するマイナスイメージはなかったのですか?
澤田さん:正直、何も知りませんでした。初任者研修のときに既に現場で働いている人に「すごくつらいよ」と言われて、「大変な業界に入ってしまったかな」と思いました(笑)。でも、一度決めたことは最期までやり通すという信念があります。これまで子供のオムツ交換も洗濯も掃除もやってこなかった所謂 “ダメ夫” だったので、やってみることで自分の経験値も上げたかったですね。負けず嫌いなんです。
藤井:介護への転職を決めてから、どう動かれたのですか?
澤田さん:先に独学である程度の知識を収集しておこうと思いました。私の場合、YouTubeでもいろいろな介護技術を見ていて、「奥の深い仕事だ、介護の仕事を経験したい」と思いました。 そんな時に、Webサイトで検索してカイゴジョブアカデミーに出会いましたが、「コロナだからすぐに開講できるかわからない」とのことでしたし、エージェントさんとの連絡も最初のうちは煩わしいと感じることがありました。でも、やりとりをしているうちにエージェントさんとの会話が面白くなってきて、受講料が無料になる特待生制度にも興味をもち、応募することにしました。
藤井:就職する前に初任者研修を終えられたのですか?
澤田さん:いいえ。エージェントさんと相談しているうちに、何社か面接をすることになりました。退職後にのんびりしようと思っていたのに、退職1週間後に面談予定が入り、履歴書の書き方や面接のコツなどを教えてもらいました。今までのキャリアはあまり役に立たないので、自分なりに長所と短所を明確にしました。プログラミングができるので、利用者の多種多様なデータを処理して、現場でみんなが活用できるプログラムを作成できるかもしれない点をアピールしました。
藤井:なるほど。全体を観察して、問題を発見して、その処理をしていくという点でプログラミングと介護と似たところもあるのですね。
利用者の感じ方、相談をする側の気持ちがわかった
藤井:実際に授業を受けてみてどうでしたか?
澤田さん:座学は眠かったこともありましたが、実習は他の人のいろいろな介護のやり方を生で見ることができて、「自分はここがダメだ」「あの人のここが上手い」とプラスになりました。実習では利用者の役もしますので、利用者の感じ方も体感できたのも良かったですね。ときには先生から厳しい指導をしてもらいましたが、いまとなってはそのアドバイスが有難かったです。
藤井:澤田さんは初任者研修を修了する前に就職をされたわけですが、学ぶのと働くのでは、どちらが先のほうがいいと思われましたか?
澤田さん:私は就職前に独学していたので現場でも何とかなっていましたが、まったく勉強してないと現場の専門用語に戸惑うと思います。やはり、初任者研修を受けてから現場に入ったほうがいいと思いました。
藤井:授業で何か印象に残っていることはありますか?
澤田さん:看護師から介護士になった先生にいつもいろいろ質問をしていました。その先生が「正解はないけど、利用者にとって良いことを自分で見つけていくのが大切だよ」と言われたことですね。
藤井:たしかに、正解はないですよね。就職先については、希望のサービス形態はあったのですか?
澤田さん:とくに考えていませんでした。経験上、会社のホームページではきれいな写真が使われ、実態と異なる場合があるのはわかっていましたから、「とにかくまずは現場を見てから」と思っていました。結局、5社の候補があったのですが、1社目に面接した有料老人ホームに決めました。
藤井:1社目で決めたのはなぜでしたか?
澤田さん:1社目の面接にエリアマネージャーがわざわざ来てくれたんです。異業種から転職してくる人の意志の強さを見て、のびしろのある人間か見極めるためだったそうですが、このエリアマネジャーの話に心が動かされました。その方は東北大震災で職を失い、上京してから一つひとつの壁を乗り越えて、今の立場になったそうです。ご自身が介護士になったときの面白いエピソードやプライベートなことまで話してくれて、その人間性に魅かれて、「この人に面倒を見てもらいたい」と思って決めました。人生において大切にすべきことは、1に“健康” 2に“つながり” 3に“成功”。 仕事をしていると、どうしても実感の得やすい“成功”にとらわれがちになるけど、 ただ成功の土台には、心身の“健康”と、人との“つながり”があることのアドバイスを頂きました。
藤井:前職とまったく違う職場環境ですが、すぐに慣れましたか?
澤田さん:最初は大変でした。先輩が厳しい方々で、ココロもカラダも筋肉痛になりましたよ。正直、給与も少ないと感じました。でも、介護の世界でのお金の流れは把握していたので、それは仕方がないと思っています。お金ではなく感謝や信頼を得られること、もっと上のキャリアを目指せることで自分は納得しています。
藤井:異業種への転職ですが、澤田さんの得意なことが活かされていると感じることはありますか?
澤田さん:前職から人のプロフィールを覚えるのが得意で、1週間から10日くらいで施設の業務フローやご利用者の顔と名前を一致させましたよ。
藤井:それはすごい! 夜勤もされているのですね。不安はありませんでしたか?
澤田さん:前職でも納期に間に合わせるための夜勤はあったので、「夜勤はできます!」と引き受けたのですが、甘く考えていました。眠れるかと思ったら、ひと夜勤の平均歩数は15,000歩。眠る暇もなく、体力が要ります。これまでに緊急搬送を4回ほど経験しました。先輩にも助けてもらいました。とにかくメモを書いて渡して、アドバイスを受けました。前職は相談される側の仕事だったけど、相談する側の気持ちもよくわかりました。相談することは重要です。不安を解消するし、問題を共有できます。
藤井:続けて実務者研修も受講されたのですね。
澤田さん:はい。エージェントの方が「身に付いた習慣のまま実務者研修も受けたほうがいいですよ」と言われたので。知識がより深まるし、実務者研修を受けてから介護の現場の風景や利用者の見方も変わりましたよ。喀痰吸引などの専門技術を学べただけでなく、周囲の人たちと連携する大切さ、利用者の変化を見なくてはいけない理由もわかりました。情報を共有するためのレポーティングの必要性もわかりました。
お金で買えない「心の豊かさ」を得るために
藤井:介護に携わって「良かった」と思えることは何でしょう?
澤田さん:お金の使われ方や施設の選び方もわかってきたので、親が要介護になったときにも対応できるし、身近な人にも教えてあげられます。「私はお金を払っているのだから、面倒をみてもらうのは当たり前」と天に唾を吐くような考えを持つ人もいますが、「そうじゃないですよ。みんなで支え合って第二の人生を送っているからこそ、いまの健康が続いているんですよ」と話したことがあります。自分も将来直面する老後の介護についても冷静に考えることができるようになり、介護士になって良かったと思っています。
藤井:ご自身にとってもメリットがあるということですね。「人のためになっている」という実感はありますか?
澤田さん:苦労して働くことが、お金ではなく信頼や感謝というリターンで返ってくるのは嬉しいことです。そのリターンで自分の心が豊かになるのは介護ならでは。テレビで災害支援をしている人を見ていても感じるのですが、人の心を揺さぶるようなオーラが出るような人間になりたいですね。
藤井:お話を聞いていると、「心の豊かさ」「人と人との関わり合い」というのがキーワードでしたね。介護で働くようになって、何かご自身に変化はありましたか?
澤田さん:前の職場では「鬼将軍」と呼ばれていましたが、介護は厳しいだけでは人はついてこないので、飴とムチでやさしくフォローするように心がけるようになりました。入ってすぐに辞めてしまう人もいて、相談相手がいたら続けられたのかなとも思いました。長く勤めてもらうために、リーダーとしてどうしたらいいかも課題です。
藤井:今後の目標は?
澤田さん:3つあります。まずは、2026年1月に介護福祉士の試験に一発合格すること。 2つ目は、いまのチーム編成をうまく回していきたいということです。ITを使ってシステム化して、誰がやっても同じようにできるテンプレートを作りたいですね。みんなが楽に働けるように仕事のしくみを改善したいです。3つ目は自分の人間的な器を大きくすることです。「人を許すことができる」「他人の意見を素直に聞く」 経験を重ねると、頭が凝り固まってくる。誰であろうと人の意見を素直に受け止める心が大事です、他人の視点も受け止めながら、成長につなげていける介護士になることです。同時に、介護は体力勝負なので60代でも耐えうる基礎体力をつけたいです。
藤井:セカンドキャリアを考えている方に何かアドバイスをお願いします。
澤田さん:退職してから何をするのかなかなか決められないものです。私も、エージェントさんに「自分が成長できるような職種って何ですか?」とか聞きましたね。その時に、「自分の成長のためだったら介護がいいのでは?」など、いろいろなキーワードを投げかけてくれました。それがきっかけで、「一度介護の話を聞いてみようか」と行動に移せましたから、やっぱり人と話すことは大切だと思います。
インタビューを終えて
早期退職をされて介護の世界にチャレンジされた澤田さんのお話には、セカンドキャリアで人生を豊かにするヒントがいっぱいありました。人が働くのはお金のためだけではなく、「誰かの役に立つ」ことで得られる精神面な充足感も得難いものです。50代、60代で「老後の豊かさ」を考え始めたとき、セカンドキャリアとして介護業界で働くという選択。その際に、1人で考えるより「カイゴジョブアカデミーの担当者と話してみる」という行動をとると、背中を押してくれる言葉や具体的な転職方法を聞けるのではないでしょうか。
構成、執筆:谷口のりこ
「みんなの介護転職ストーリー」でご紹介している方々は、無資格・未経験から介護業界に挑戦したカイゴジョブアカデミーの卒業生です。皆さんが活用された「特待生キャンペーン」なら、自己負担なしで「介護職員初任者研修」の資格を取得でき、さらに介護職専門のキャリアアドバイザーによる就職先の紹介も受けられます。資格が1つあるだけで、給与や待遇がアップし、就職・転職時にも大変有利です。下記リンクからそれぞれ詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
>>自己負担なしで介護職員初任者研修を取得できる!「特待生キャンペーン」についてもっと見る
>>介護の最初の資格といえばコレ!「介護職員初任者研修」についてもっと見る
この記事の監修者
藤井寿和(ふじい ひさかず)
1978年 静岡県西伊豆生まれ。
18歳~24歳まで陸上自衛隊の救急隊員(衛生科)を経験し、
三宅島噴火に伴う災害派遣をきっかけに介護の仕事に転身。
医療法人で在宅医療に特化した介護を学び、介護施設の介護職員、生活相談員、管理者、事業部統括マネージャーに就任した後に、株式会社にて超都心型デイサービスの管理者を経験後、36歳で独立。
2015年に合同会社福祉クリエーションジャパンを設立。
介護福祉士現場コンサルタント、商品開発アドバイザー、講師業を経て、2017年、テレビ朝日の“スーパーJ チャンネル”にて自身への特集、密着取材が全国放映された経験から、介護業界の情報発信とスポットライトが当たる重要性に気づき、自主メディアの制作を志す。
介護専門誌のフリーペーパー発行人、編集長を歴任し、2021年9月にメディア事業へ注力する株式会社そーかいを設立し、代表取締役に就任、現在に至る。
・一般社団法人 日本アクティブコミュニティ協会 公認講師
・合同会社福祉クリエーションジャパン 代表
・株式会社そーかい 代表取締役
・ものがたりジャーナル 編集長
・NPO 16歳の仕事塾 社会人講師
・映画「ぬくもりの内側」プロモーションディレクター
澤田さん:いいえ、前職に在職中はまったく考えていませんでした。FP(ファイナンシャルプランナー)の資格ももっていたし、趣味でビットコインもやっていたので選択肢はほかにもありました。ですが仕事をしないと頭も身体もなまりますし、家族にも仕事をするように勧められたので、仕事を探そうと考えました。