祖母の介護に役立てず悔しい思いも。介護を学びその奥深さに気づいた男性の胸中
初任者研修から踏み出した一歩
「みんなの介護転職ストーリー」、今回の主役は田島仁和(よしかず)さんです。スーパーの店員や配送業の仕事に就き、ノルマをこなしていく日々に充実感を覚えていた田島さん。しかし祖母の介護で介護専門職の仕事ぶりを目の当たりにし、「自分も資格を持った専門職になりたい」と奮起します。カイゴジョブアカデミーを通じて初任者研修を受け、晴れて看護助手として病院に転職した田島さんに、仕事をするうえで大切にしていることは何か、お話を伺いました。
2024年1月~4月 介護職員初任者研修/福岡天神校
2024年6月 病院の看護助手として転職
介護の専門性に触れ、興味をひかれた
藤井:まずはこれまでのお仕事について教えてください。
藤井:配送の仕事を一番長く続けられたんですね。
田島さん: そうです。配送業はノルマがあり、1日に配達する個数が決まっていて、それが達成できたら次の目標が設定される仕組みでした。いかに効率よく配達するか、スキルを磨いていくのが楽しかったです。
藤井:達成感があったんですね。
田島さん: 最終的には1時間に10個以上配達できるようになっていたんですが、そのぶん勤務が長時間にわたり帰宅も夜中になるなどしていたので、40代や50代で配送業を続けていくのは体力的に難しいのかなと感じ始めていました。それでなんとなく別の仕事を考えた方がいいのかなと思いました。
藤井:介護職に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか。
田島さん: その頃祖母が要介護状態になってしまい、通所サービスを受けるようになりました。でも認知症が進行していくにつれ自宅で介護できなくなり、施設に入ったんです。そのことが介護を意識するきっかけになりましたね。
藤井:身内の方が弱っていくのを見るのはつらいですよね。
田島さん: 祖母は施設に入所した後もずっと「家に帰りたい」と言っていました。祖母に対して自分にもっとできることがあるんじゃないかと思いながら、介護の知識や経験がない自分には何もできず、悔しい思いをしました。
藤井:そのことが介護職に興味を持つきっかけになったんですか。
田島さん: そうですね。施設で祖母が介護を受けている様子を間近で見ながら、介護職の専門性を肌で感じたんです。自分もちゃんと資格を取って介護業界に転職し、専門的な仕事をしてみたいと思うようになりました。
藤井:転職しようと決めてから、まずどんな行動をしましたか?
田島さん: 最初にしたのが情報収集です。ネットで「介護」「転職」「資格」などのキーワードを入れて検索し、カイゴジョブアカデミーのサイトを見つけました。それでちょっと話を聞いてみようと登録してみたんです。
藤井:実際に登録してみていかがでしたか?
田島さん: 担当者からすぐに連絡があって、介護業界の情報提供や求人紹介をしてくれたり、相談に乗ってくれました。カイゴジョブアカデミーは初任者研修を取るためのスクールが通える範囲にいくつかあることがわかり、便利だなと思って受講することにしたんです。
初任者研修で学んだ「利用者さんの権利」
藤井:初任者研修では、クラスメートは何人でしたか?
田島さん: 9人くらいでした。みんな仲が良く、休憩時間にはおしゃべりに花を咲かせましたね。研修期間は15日間でしたが、飽きることなく楽しく通学させてもらいました。
藤井:講義で印象に残っているものはありますか?
田島さん: 身体拘束についての講義です。身体拘束とは、利用者さんを車椅子やベッドにベルトなどでくくりつけることなんですが、あれには最初ひどく違和感を覚えました。拘束について講義で聞いたとき、自分がされたら嫌だなと思いましたし、もちろん人を拘束することもしたくないと思いました。
藤井:身体拘束については、最初は誰でも抵抗感を抱くと思います。
田島さん: 身体拘束は人権上基本的には禁止されていますが、利用者さんが混乱して怪我をしたり命に関わったりするような場合に、要件を満たしさえすれば実施できるようになっているんですよね。
藤井:やみくもに身体拘束することはできませんからね。しかし、現場では緊急時など、拘束が必要な場面もあります。
田島さん: 私も最初は「拘束はいけないことだ」と思いましたが、介護現場では認知症や脳梗塞による麻痺があったり、高齢で体の機能が衰えたりしていて、転落や転倒をしやすい利用者さんも少なくないんです。そういう方が一人で動こうとすると事故が起こりやすい。やはりその人の安全を守るために、介護職としてどうすべきかを考えることが大事なんだとわかりました。
藤井:しっかり学習したからこそ、わかったことですね。
田島さん: はい。最終的には利用者さんをよく観察した上で、安全と利用者さんの人権のバランスを見極めることが大切です。複数のスタッフで議論を重ねた末に、拘束をするかしないか決める決まりになっていますが、身体拘束についていろいろ悩んだことは利用者さんの権利を考えるよい機会になったし、すごく有意義な学びになったと思います。
介護のプロフェッショナルを目指して
藤井:現在病院で看護助手をされているのですよね。
田島さん: 介護施設と病院の看護助手とでどちらに就職しようか迷いましたが、先に内定の決まった病院に決めました。病院には寝たきりの患者さんが多く、認知症や麻痺などで会話がスムーズにいかない患者さんも少なくないです。
藤井:病気や障害をもっている患者さんとのコミュニケーションも様々ですよね。
田島さん:
そうですね。自分としては患者さんとたくさんコミュニケーションを取りたいのですが、患者さんに話しかけても返事がないことも少なくないし、私の言葉が伝わっているのかなと不安に感じることもあります。
藤井:そんなときはどうしていますか?
田島さん:
患者さんからの返事はなくても、実際に食事介助したり入浴介助したりする中で、ケアを通して互いに伝わるものがあるのかなと思っています。介護においては言葉がすべてではないというか、患者さんとの関係性の中で培われていく絆があるのではないかと感じています。
藤井:そんなふうに思えるのは素晴らしいことですね。
田島さん:
やはり祖母が介護を受けていた時に、自分に技術がなくて思うように手伝えず悔しい思いをしたことが今の仕事に活きているのかもしれません。
藤井:田島さんが介護の仕事に就いて、おばあ様もきっと喜んでいるでしょう。
田島さん:
そうだと嬉しいです。資格を取って病院で働き始め仕事のやりがいを感じ始めているところですが、現状に満足せずもっと介護のスキルを磨きたいと思っています。患者さんの尊厳を大事にするためには、やはり介護技術が必要ですから。
藤井:今後の夢や目標を教えてください。
田島さん: 次は実務者研修を受け、またさらに上の資格を取り、介護技術を総合的に磨きたいです!特に言葉でのやり取りが難しい方とどのようにコミュニケーションを取ったらいいのかに関心があるので、コミュニケーション技術を専門的に学んでみたいと思っています。対話や関係性を大事にすることは、結果的には患者さんの権利を尊重することにつながると思っています。
インタビューを終えて
田島さんの話を伺っていると、患者さんとの対話を通して、権利を大切にしようとする姿勢がとても印象に残りました。一般的に介護は、食事や入浴の介助といった身体的なお世話をする仕事だと思われていますが、実はそれだけではないのです。相手との会話やケアを通して、価値観を通い合わせたり、自尊心を守ったりするのも介護のエッセンス。「真剣に人と向き合う仕事がしたい」と思う人は、介護職に向いているのかもしれません。一度、介護の話を聞いてみませんか。
構成、執筆:秦佐起代
記事の監修者:藤井寿和(介護福祉士)
「みんなの介護転職ストーリー」でご紹介している方々は、無資格・未経験から介護業界に挑戦したカイゴジョブアカデミーの卒業生です。皆さんが活用された「特待生キャンペーン」なら、自己負担なしで「介護職員初任者研修」の資格を取得でき、さらに介護職専門のキャリアアドバイザーによる就職先の紹介も受けられます。資格が1つあるだけで、給与や待遇がアップし、就職・転職時にも大変有利です。下記リンクからそれぞれ詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
田島さん: 高校卒業後はスーパーの店員として働き、その後、工場勤務や配送の仕事をしてきました。どの仕事も精一杯頑張ることでスキルが上がっていくのが楽しかったです。